研究課題/領域番号 |
25420754
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤谷 渉 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 技術専門員 (90379149)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生体アパタイト / 配向性 / 下顎骨 / 咀嚼障害 / 微小領域X線回折 / 骨系細胞 |
研究実績の概要 |
下顎骨における生体アパタイト結晶(BAp)の配向性は、近遠心方向へ優先配向し、成長や咀嚼にともなうin vivo応力分布の変化とともに協調的に制御されている。本研究では咀嚼の有無による骨量(骨密度・骨体積)、骨質(BApのc軸配向性)の局所変化をミクロンオーダーの微小領域でとらえ、骨微細構造と骨力学機能との関連を明らかにすることを最終目的としている。 今年度は、はじめに成長にともなう咀嚼による応力負荷状態の変化に注目し、ビーグル犬下顎骨について成長や咀嚼および咀嚼障害にともなう皮質骨密度および骨質変化を詳細に解析した。 8ヶ月から14ヶ月齢のビーグル犬下顎骨(n=3)を採取し近遠心方向に垂直な断面内において骨量・骨質解析を行った。咀嚼障害モデルとするため8ヶ月齢で左側下顎の犬歯以外を全て抜歯した。一方、右側は抜歯せず3, 6ヶ月後に採取した。皮質骨断面積および骨密度はpQCTで測定した。骨質は反射法、透過法にて微小領域XRDにより行った。組織の観察は光学顕微鏡およびμCTなどにより行った。 皮質骨の骨密度は捕食部位と咀嚼部位で不連続な変化を示した。一方、近遠心方向の骨質変化は部位に強く依存した。二次元骨面内における配向性変化は咀嚼の方向へも配向を示す領域が認められた。 つぎに咀嚼障害モデルとしてc-src遺伝子KOマウスに注目した。c-src KOマウスの下顎骨は初年度解析のop/opマウス同様対照群に比べて小型で臼歯を含む断面形状も複雑である。そこで一軸荷重となる骨断面において、メカノセンサーであるオステオサイ(OCY)の直接観察を試みた。ナノX線CTを用いて観察を行った結果、応力が負荷される長軸方向と平行に伸長したOCYが認められた。その伸長度合いは対照群に比べてc-src KOマウスで低くなることが明らかとなった。骨質についても同様の傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度を項目別に以下に示す。 1.動物モデル作製:下顎骨の形状を変化することなく、上臼歯を削り取り、咀嚼荷重を排除するモデルについて準備を進めている。 2.組織学的な評価:ナノX線CTの撮影最適条件、試料の調整方法など諸条件を確立し、遺伝子欠損モデルのc-src KOマウスの下顎骨OCY観察に先立ち一軸荷重が負荷される長管骨のOCYについてナノX線CT観察を試みた。下顎骨の試料染色後の光学顕微鏡観察、ソフトX線による透過像観察そしてpQCTによる骨断面定量画像やμCTを用いての3D断層画像など多くの手法を取り入れ三次元定量評価を進めている。 3.解析の進行状況:結晶学的な手法を用いてのBAp配向解析も進行中である。全体的に見てこのような状況は極めて順調であるといえる。 4.学会等での発表:今年度の研究業績については学会等で発表を行う。
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今後の研究の推進方策 |
c-src KOマウスなどの下顎骨は対照群に比べて小型である。臼歯を含む断面形状も複雑であるため骨量・骨質を評価する部位の選択を慎重に決定しなければならない。したがって、解析をより正確に進めるためには、極めて分解能が高いナノX線CTや透過型電子顕微鏡などを活用し結晶学的な解析を進める。これまでの結果をふまえ、人下顎骨に咀嚼形態が極めて類似のサル下顎骨を試料とし、咀嚼の有無にともなう骨量・骨質変化の定量解析結果をヤング率などの骨力学特性と対応させて検討する。op/opマウスやc-src KOマウスなど遺伝子欠損疾患マウスのみならず咀嚼障害モデルによる結晶配向化制御について総合的に検討する。
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