応力場を用いた骨質制御による骨力学機能化の達成のため、① 骨中で応力感受を担うと期待しているオステオサイト(OCY)を介した外的力学刺激によるアパタイト配向性改変機構の解明、② 応力場を用いたin vivoでの配向性、骨力学機能の人為的制御を両輪として研究を遂行した。 正常骨、疾患骨を用いて、生理的状態よりも大きな力学的負荷(一軸応力)を人為的に動物骨へ負荷した場合、骨量のみならず応力方向への配向性が顕著に変化し、応力の骨質に対する影響が明らかとなった。結果として、骨の力学機能が上昇し、応力場を用いた骨質制御による骨力学機能制御を達成した。 さらに、高配向化した骨において、骨小腔(OCYが存在する骨中の微小孔空間)形態が顕著に変化し、刺激に対してOCYがその形状を変えることで応力感受効率を最適化する可能性を初めて見出した。 さらに、疾患骨ならびに再生骨においても配向化制御を達成した。疾患骨の場合は、特定の生物学的状況下にて力学負荷を与えると正常時よりも骨質が向上することを示した。したがって、力学的刺激を用いて、異常骨での骨質正常化やその促進ができる可能性を本研究により示した。 本研究で得られた知見に基づき、今後、生物学的観点からのさらなる解析を実施することによって、応力場の負荷から、OCYを介した感受、配向性構築までの一連の関連因子の同定とメカニズム解明を目指す必要がある。これまでに、骨量・骨密度の観点からしかとらえられてこなかった骨力学機能化について、骨質の観点からの理解を深化し、骨のメカノバイオロジーの新たな側面の解明を目指す足がかりとなる基礎的知見を構築できたと考える。
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