研究課題/領域番号 |
25420762
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
土屋 文 名城大学, 理工学部, 准教授 (90302215)
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研究分担者 |
森田 健治 公益財団法人名古屋産業科学研究所, その他部局等, 研究員 (10023144)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リチウムコバルト酸化物 / 二次電池 / イオン伝導 / 二層薄膜 / 水素吸収 / 反跳粒子検出法 / プラチナ触媒 |
研究概要 |
パルスレーザー堆積法を用いて、Li1.4Ti2Si0.4P2.6O12-AlPO4 (LATP)のリチウムイオン導電性固体電解質の片面に正電極として直径約10 mm、厚さ約260 nmのリチウム-コバルト酸化物(LiCoO2)を約23 Paの酸素ガス雰囲気において蒸着し、リチウムイオン二次電池試料を作製した。さらに、試料に電圧を印加可能にするために、試料の両面に厚さ約20 nmのプラチナ(Pt)を蒸着した。作製した二層薄膜(Pt/LiCoO2)試料中に存在する初期のリチウムおよび水素の濃度分布について、イオンビーム分析法の一つである反跳粒子検出(ERD)法を用いて測定した。ERD法の場合、東北大学金属材料研究所および京都大学附属量子理工学教育研究センターに設置されたタンデム型加速器からの2.8 MeVのヘリウムイオン(He2+)および9 MeVの酸素イオン(O+)をプローブビームとして用い、試料表面の法線に対して75°で入射し、イオンとの弾性衝突により入射方向に対して30°前方に散乱された水素イオン(H+)およびリチウムイオン(Li+)のエネルギーとその数を表面障壁型半導体検出器(SSD)により測定した。同時に、入射方向に対して170°あるいは165°後方に散乱されたHe+およびO+イオンを測定(ラザフォード後方散乱(RBS)法)することにより、Pt/LiCoO2の構成元素(Li、Co、Pt)およびそれらの濃度分布を評価した。ERDおよびRBSのそれぞれのスペクトルから、HがLiCoO2薄膜中に吸収されていること、CoがPt表面に偏析していることが判明された。LiCoO2中に捕獲されたHの存在は、Liの伝導に大きな影響を与えると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、マグネトロンスパッタリング蒸着装置を利用して、小型リチウムイオン二次電池の作製を行う予定ではあったが、パルスレーザー堆積法を取り入れることにより、酸化物薄膜試料の作製および試料作製時間の短縮が可能となった。また、東北大学金属材料研究所だけではなく、京都大学附属量子理工学教育研究センターに設置されたタンデム型加速器の共同利用が可能となったため、9 MeVの高エネルギー酸素イオンをプローブビームとして用いることができるようになり、水素濃度分布とリチウム濃度分布をよりはっきりと分けて測定することが可能となった。次年度は、試料に電圧を印加したり、加熱しながらその場で水素およびリチウム濃度分布を計測し、それぞれの動的挙動を解析する予定である
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に作製した小型リチウムイオン二次電池、試料ホルダーおよび改良した超高真空装置を用いて、充電時の場合、リチウムを固溶する正電極からリチウムを全く固溶しない負電極への電位勾配により駆動されて流されるリチウムイオンの流量をERD法によりその場測定する。このとき、正電極中の初期リチウム濃度、加熱温度(22~400℃)および電圧(±3.5 V)をパラメータとして測定する。次に、放電時のときの負電極から正電極への化学ポテンシャルの差によって流されるリチウムイオンの流量をERD法によりその場測定する。さらに、その場測定と同時に、既存の直流電気抵抗および交流インピーダンス測定装置を用いて、各条件におけるリチウムイオン二次電池のリチウムイオン伝導度を測定する。同時測定が予定通り進まなかった場合は、ERD法およびXPS法によるリチウム濃度測定とリチウムイオン伝導度測定を個別に実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の薄膜試料作製および水素およびリチウム濃度分布測定において、予算を執行すること無しに既存の装置をある程度そのまま利用して研究を進行することができた。 次年度は試料を真空中で加熱するための試料ホルダーの改良、真空排気装置 (ロータリーポンプ、真空用銅ガスケット、スエジロック、ステンレスチューブ、バリアブルリークバルブ、フランジ、導入端子等)、およびイオンビーム分析測定装置に必要な表面障壁型半導体検出器(SSD)の購入を実施する予定である。
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