研究課題/領域番号 |
25420763
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山口東京理科大学 |
研究代表者 |
阿武 宏明 山口東京理科大学, 工学部, 教授 (60279106)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 排熱有効利用 / 熱電変換 / シリコン / クラスレート / 熱電素子 |
研究概要 |
省エネルギー・環境共生型社会の実現に向けて、膨大な量の未利用排熱を電気エネルギーに直接変換する熱電発電技術の実用化が切望されている。本研究は、資源量豊富で毒性が低く安価・低コストの元素からなる半導体シリコン(Si)クラスレート系材料のpn制御と熱電特性の最適化を行い、さらに耐酸化性・耐熱性に優れたSiクラスレート系熱電発電素子を開発することを目的としている。 (1)環境半導体クラスレート熱電材料の開発:n型Siクラスレート系材料のSiホスト元素置換について従来のAl置換やGa置換に替わる新規手法を試験した。合成した試料の粉末X線回折測定、ゼーベック測定、Hall測定等から結晶学的特性と熱電特性を評価し、試験した手法の有効性およびプロセス条件や元素選択・添加量などのパラメータ制御の方向性について知見を得た。 (2)新規p型熱電材料の探索:Siクラスレート系の殆どがn型であるため、資源量豊富・低毒性・低コストの環境元素を主成分とする新規p型材料の探索を行い、候補としてカルコパイライトCuFeS2を合成しCu/Fe比の制御によりp型が可能であることを見出した。 (3)環境半導体クラスレート熱電素子開発:Siクラスレート材料の大気中熱処理による表面への影響をSEMや光電子分光等による表面状態の分析・解析、X線回折、熱分析等によって評価した。このことにより、Siクラスレートの熱酸化活性化エネルギーの値が、この系で初めて明らかとなり、空気中・高温(600℃)での耐酸化性に優れることが判明した。さらに、素子化要素技術である電極材料とSiクラスレート材料の接合について、放電プラズマ焼結法を用いた拡散接合と金属ペーストを用いた接合を試し、素子・電極接合における機械的強度、界面接触抵抗、熱応力等の課題点を抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主な研究項目(1)環境半導体クラスレート熱電材料の開発、(2)新規p型熱電材料の探索、(3)環境半導体クラスレート熱電素子開発について、それぞれ初年度の目標とした実験項目をほぼ実施し、新しい知見も得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)環境半導体クラスレート熱電材料の開発:H25年度に検討した材料設計から、熱電特性最適化のための元素選択と添加量、合成プロセス条件などの最適化を進める。合成した試料の結晶構造解析、熱的安定性、組織・構造観察、組成分析等、多角的に詳細評価を行う。さらに熱電特性のキャリア濃度依存性を詳細に測定し、熱電性能に関わる重要な物性のキャリア濃度依存性を明らかにして最適化を図る。 (2)新規p型熱電材料の探索:初年度に検討した系から有望な系を絞り込み、その系の合成を試験的に開始すると共に、基本的な熱電特性を測定し、p型熱電材料としての性能を評価する。材料探索には電子構造計算も活用して効率的に進める。 (3)環境半導体クラスレート熱電素子開発:合成した新規材料の中で重要なものについて熱的・機械的特性の評価・解析を進める。また、Siクラスレートの耐熱性・耐酸化性向上のための表面処理について検討する。素子化要素技術について、接合条件(メタライズ、金属ペースト、温度、圧力、時間、等)の検討を進める。熱的・機械的特性のデータから、熱電素子に発生する熱応力・内部応力を計算し、それを緩和する金属電極接合・素子構造を考察、ならびに熱電特性のデータから出力・効率に対して最適な素子形状の設計を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の基本方針に変更はないが、実験項目・内容・条件等を検討した結果、2年度以降の試料合成や素子作製と評価・解析等の実験を効率的に進めるのために調整した。 H25年度の結果を踏まえて、試料合成の条件の検討がさらに必要であること、素子接合実験のための試料量が必要であること、電極接合条件の検討も引き続き必要であるため、それらの実験費に充てる。
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