省エネルギー・環境共生型社会の実現に向けて、膨大な量の未利用排熱を電気エネルギーに直接変換する熱電発電技術の実用化が切望されている。本研究は、資源量豊富で毒性が低く安価・低コストの元素からなる半導体シリコン(Si)クラスレート系材料のpn制御と熱電特性の最適化を行い、さらに耐酸化性・耐熱性に優れたSiクラスレート系熱電発電素子を開発することを目的とする。 1. 環境半導体クラスレート熱電材料の開発 (1) Siクラスレートにアクセプタとドナーを同時添加する手法で過剰のキャリア濃度を低減して熱電特性を最適化することを目指した。ドナー元素を固定しアクセプタ元素をH26年度と異なる他の候補に変更した試料を作製した。粉末X線回折、SEM組織構造観察、元素分析、熱電特性(キャリア濃度、ゼーベック係数、導電率、等)の評価・解析を行った。その結果、キャリア濃度が減少しゼーベック係数が増加する効果の高い元素組合はGa-Pであることが明らかとなった。 2. 環境半導体クラスレート熱電素子開発 (1) 熱的・機械的特性の評価・解析:合成した同時添加試料ならびに比較検討した元素置換試料の超音波試験を実施して、それらの試料の弾性定数を算出すると共にGa-P同時添加による弾性定数への影響を明らかにした。その結果から、Ga-P同時添加Siクラスレートを熱電素子応用する場合に熱応力の低下が推測された。これは、同時添加の有益な点である。 (2) 素子設計と素子化要素技術の開発:Siクラスレートおよび元素置換材料の熱電特性温度依存性から素子出力特性のシミュレーションを行い、高出力・効率化への最適な素子形状を設計する基礎データを得た。また、放電プラズマ焼結法を用いて、Siクラスレートと金属電極の良好な拡散接合に成功し、重要課題の一つであった素子電極技術開発が一歩前進した。
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