研究課題/領域番号 |
25420764
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
井 誠一郎 独立行政法人物質・材料研究機構, 構造材料ユニット, 主任研究員 (60435146)
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研究分担者 |
大村 孝仁 独立行政法人物質・材料研究機構, 構造材料ユニット, 副ユニット長 (40343884)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 力学応答 / 結晶粒界 / 粒界偏析 / 転位 / ナノインデンテーション / マルテンサイト変態 / 形状記憶合金 |
研究実績の概要 |
平成26年度は,化学的不均質性評価法の探索を主に実施した.純Alと0.1at%Siを含有したAl-Si合金多結晶中の構造および化学的不均一性について着目し,粒界と粒内にナノインデンテーションを行い,荷重負荷および除荷時の挙動を評価した.荷重負荷時の転位発生,増殖に由来するポップイン現象はいずれの領域でも顕著に認められ,粒内におけるポップイン開始荷重はそれほど大きな違いは認められなかった.一方,粒界においてナノインデンテーションを行ったところ,除荷過程曲線から算出される硬さと剛性率は,純Al,Al-Si合金いずれにおいても粒内のそれらと比較して高いことが明らかとなった.しかしながら,純Al,Al-Si合金に対するナノインデンテーションによって得られた硬さと剛性率について粒界と粒内の差分を検討すると,Al-Si合金の差は純Alに比べて小さいことが明らかとなった.研究代表者や他の研究者によるこれまでの報告より,Al中のSiは粒界に偏析しやすい傾向であることが明らかとなっており,粒内に比べて大きなFree Volumeを有する粒界にSiが偏析することで,そのFree Volumeが緩和され,剛性率や硬さの減少が生じたと現時点では理解している. Ti-Ni合金の力学応答については,これまでに得られた成果の一部を論文として発表すると共に,より詳細な応力負荷時の挙動とSPMを用いた表面起伏の観察を行うことで,力学応答と組織形成の理解に努めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
粒界偏析傾向等,化学的不均質性を力学応答から評価・検討することを念頭に置いて遂行してきたが,純Alにおいても粒界と粒内の力学応答に違いが認められた.合金系における偏析傾向を把握する前に,ベースとなる純Alの差異を検討する点に時間を要し,当初の予定よりやや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度が最終年度であることから,対象とする合金系を絞り純Alとの比較を行うことで,化学的不均質性の評価方法確立に向けた研究を遂行する.一方力学応答については,引き続きTi-Ni合金を対象とした研究を継続する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は研究代表者の所属機関内人事異動に伴い,当該助成金を使用することがほとんどできなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は,やや遅れている研究を加速させるために,研磨機等の備品を導入し効率的な実験を実施する.また,ナノインデンテーションで明らかになりつつある粒界の剛性率等諸物性を理解するために粒界構造評価装置を導入することを予定している.
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