研究課題/領域番号 |
25420765
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
染川 英俊 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 主任研究員 (50391222)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 材料工学 / マグネシウム / 双晶 / その場観察 / ナノインデンテーション |
研究概要 |
・試料の創製 本研究課題で使用する微細結晶粒マグネシウムおよび二元系合金を、重力鋳造により溶製し、溶体化処理の後、温間押出加工によって創製した。初期微細組織は、SEM/EBSDおよびTEMを用いて観察し、何れの押出材も、平均結晶粒サイズが5μm程度で、結晶粒界近傍のひずみの蓄積や、双晶やせん断帯などの変形組織が存在しないことを確認した。 ・力学特性の理解 本研究課題では、ピコ・ナノインデンテーション法を用いて力学応答を評価する。インデンテーション圧子近傍は、複雑な三軸応力場を形成するため、従来の単軸引張・圧縮試験から得られる力学特性と異なる可能性がある。そのため、予備試験として、単結晶および多結晶マグネシウムを用いたインデンテーション力学特性の調査と、ひずみ付与にともなう内部微細組織変化について検討した。その結果、従来評価法と同様に、ひずみ速度や温度は、力学特性に及ぼす影響因子であることがわかった。また、HCP金属でよく観察される{10-12}変形双晶の形成は、結晶配向(底面と押込み圧子との方位関係)よりも、結晶粒サイズ(結晶粒界の有無)に大きく影響を受けることがわかった。 ・マイクロピラーの試作 軽元素に対するSEM/FIB加工は、内部組織変化が起こりやすいなどの理由から、難しいと言われていた。しかし、イオン照射条件(時間)を制御することで、従来のTEM試料作製法(例えば、ツインジェット法)と同様の内部微細組織を有する試料を加工・作成できることがわかった。また、同加工条件で、ピラー形状試験片の創製が可能であることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の本年度研究計画では、(i)試料の創製、(ii)マイクロピラー加工の最適化と(iii)純マグネシウムのデータ取得を予定していた。予備実験として、ナノインデンテーションを用いた単結晶や多結晶の力学特性の評価を実施したため、項目(iii)に関して十分な結果を得ることができなかった。しかし、マイクロピラー試験から取得される力学応答と比較・検証することができる極めて重要な知見であり、次年度以降の研究進行に役立つことは明白である。そのため、「おおむね順調」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
・純マグネシウムへの適応 本年度得られたSEM/FIB加工最適条件をもとに、多数のその場観察用マイクロピラーを作成し、マグネシウムの双晶発生メカニズムに関するデータ取得に注力する。 ・結晶粒界のモデル化 その場観察結果を普遍化するためには、結晶粒界に関する物理定数の理解が重要と考えられるが、実験から直接取得することが困難である。そのため、分子動力学法などの計算科学を活用することを予定している。本年度は、HCP金属の代表的な結晶粒界モデルを作成し、粒界エネルギーおよび変形にともなう内部エネルギー変化について算出する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
マグネシウム微細粒材創製に関する過去の知見と経験を活かし、必要とする微細組織からなる試料が、予定以上に容易に創製することができた。そのため、試料創製に計上していた費用が差額として生じた。 次年度は、今年度実施計画していたマイクロピラーの力学特性応答に関するデータ取得に注力することとしている。SEM/FIB装置使用費や関連消耗品費など、マイクロピラー作成に必要な費用に充当する予定である。
|