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2013 年度 実施状況報告書

化学発光法を用いた化学材料評価手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 25420766
研究種目

基盤研究(C)

研究機関独立行政法人産業技術総合研究所

研究代表者

佐合 智弘  独立行政法人産業技術総合研究所, 環境化学技術研究部門, 産総研特別研究員 (60648260)

研究分担者 内丸 忠文  独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (00151895)
高田 徳幸  独立行政法人産業技術総合研究所, 環境化学技術研究部門, 主任研究員 (70357359)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード化学発光スペクトル / 酸化劣化 / 発光種 / 一重項酸素 / 励起カルボニル
研究概要

化学発光(CL)スペクトルを用いた化学材料の劣化評価技術の開発において、CLスペクトルにおける発光種の同定と発光波長の帰属が必要である。そこで、一価の不飽和脂肪酸であるオレイン酸をポリオレフィン等の低分子モデル化合物として扱い、スペクトルの解析を行った。オレイン酸の酸化劣化過程から考えられる発光種としては、劣化に伴い生成したカルボニル化合物および一重項酸素が推察された。実際に、CLスペクトルを分離して解析を行ったところ、発光波長が既知である一重項酸素に帰属される成分を確認した。しかし、一重項酸素に帰属できない発光成分も存在した。そこで、発光種の化学構造を調べるため、劣化物の赤外吸収測定および核磁気共鳴測定を行った。その結果、カルボニル基近傍の化学構造が異なるカルボニル化合物が2種類存在していることを確認した。これら2種類のカルボニル化合物についても、CLスペクトル中の発光成分と帰属した。この帰属より、カルボニル基近傍の化学構造によって、発光波長に差が生じることを示唆した。これはCLスペクトルの基礎的な理解に対して、大変価値のある成果である。さらに、このカルボニル化合物と発光波長の帰属の妥当性については、理論化学による計算から検証し、有意義な結果を得ている。
また、モデル化合物で得られた知見を基に、ポリマー材料のモデル化合物としてポリエチレングリコール(PEG)を用い、CLスペクトルを利用した劣化評価方法の検討を行った。その結果、劣化の進行に伴い、スペクトル形状が変化していくことが確認された。この変化を考察することにより、発光種の生成過程ならびに劣化の進行過程について考察を行っているところである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、CLスペクトルを用いた化学材料(特にポリマー)の新たな劣化評価手法の開発を目指している。その過程で、特に、有機材料の酸化劣化に伴う発光スペクトルの観測とそのスペクトルの解釈を検討する必要があり、研究当初より(i)発光種の帰属と(ii)劣化反応時のメカニズム解析という大きな2つの目的を挙げている。
これまでに、低分子モデル化合物である不飽和脂肪酸を用いた研究から、目的の(i)である発光種の帰属の一端を達成した。また、帰属の妥当性についても、理論計算をもとに検証を行い、有意義な結果を得ている。さらに、発光種の生成メカニズムについても、理論化学的な検証を進めており(目的(ii))、研究目的を順調に達成しつつある。加えて、ポリマー材料は計画を前倒しして研究を行っている。ポリマー材料のモデル化合物としてPEGを用いた研究からは、発光種の生成反応に関する考察を行っているところであり、これも目的の(ii)に相当するものと言える。以上のように、大きな2つの目的を少しずつ達成するとともに、CLスペクトルの解析手法なども確立しつつあり、今後の研究の基盤を作ることができている。
また一方で、複数あると考えられる劣化反応の過程についての考察も計画しており、劣化の外的要因(加熱温度および雰囲気)を変化させた場合、特に加熱温度の影響についても検討を試みている。しかし、発光強度の時間変化から、温度上昇に伴い反応速度が上がっていることは分かるものの、劣化反応過程の違いを見出すまでには至っていない。

今後の研究の推進方策

今後も基本的には当初の計画にのっとり、CLスペクトルを用いた化学材料の劣化評価法の開発を行っていく。特に本年度(H26)は、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)といったポリオレフィン系材料を主に扱い、CLスペクトルによる劣化評価手法の検討を行う予定である。これには、これまでに行ってきた不飽和脂肪酸の研究によるCLスペクトルの知見、並びにCLスペクトルによるポリエチレングリコールの劣化評価手法が有用になるものと期待される。また、不飽和脂肪酸はポリオレフィンの低分子モデル化合物としたものの、実際にポリマーのCLスペクトル解析において他のモデル化合物が必要と考えられた場合は、適宜適切なモデルを選定し、解析を試みる。さらに、理論計算による知見を有効に活用しながら、発光波長や反応メカニズムについての考察を深めていく。
なお、研究代表者の所属が本年度より変更になったため、研究遂行に必要な物品に変更が生じる可能性はある。しかし、前所属研究所と協力できる体制を整えており、研究を滞りなく遂行できる状態になっている。

次年度の研究費の使用計画

劣化の外的要因に伴う劣化反応メカニズムを検討するにあたり、加熱温度の影響については検討を試みたものの、雰囲気(酸素)の影響についての検討に至らず、予定していたガス混合装置の購入を見送ったため。
研究代表者の異動に伴い、研究遂行に必要な物品などに変更が生じる予定である。次年度使用額と翌年度分として請求させていただいた助成金と合わせて、滞りなく研究を進められるよう、薬品や実験器具などを整えたい。特に、発光種の検討を行うために必要な測定機器(分光光度計)の購入を検討している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014 2013

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] 不飽和脂肪酸の熱酸化における化学発光スペクトルの解析2014

    • 著者名/発表者名
      佐合智弘、萩原英昭、高田徳幸、須田洋幸
    • 学会等名
      日本化学会第94春季年会
    • 発表場所
      名古屋大学 東山キャンパス
    • 年月日
      20140327-20140327
  • [学会発表] 結晶性Ir(ppy)3における熱ルミネッセンスの観測2014

    • 著者名/発表者名
      高田徳幸、石井浩
    • 学会等名
      第61回応用物理学会春季学術講演会
    • 発表場所
      青山学院大学相 模原キャンパス
    • 年月日
      20140319-20140319
  • [学会発表] 化学発光スペクトルによるポリエチレングリコールの劣化評価2014

    • 著者名/発表者名
      佐合智弘、萩原英昭、高田徳幸、須田洋幸
    • 学会等名
      第63回高分子学会年次大会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
    • 年月日
      2014-05-28 – 2014-05-30
  • [学会発表] 化学発光スペクトル測定による化学材料評価法の検討2013

    • 著者名/発表者名
      佐合智弘、萩原英昭、高田徳幸、須田洋幸
    • 学会等名
      環境研究機関連絡会 第11回環境研究シンポジウム
    • 発表場所
      一橋大学 一橋講堂
    • 年月日
      20131113-20131113

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公開日: 2015-05-28  

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