研究課題/領域番号 |
25420767
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
橋本 雅美 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 研究員 (20450851)
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研究分担者 |
金高 弘恭 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50292222)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 酸化チタン粒子 / 水酸化アパタイト / 擬似体液 / 酸窒化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、酸窒化処理によって生体活性能を飛躍的に向上させた酸化チタン(TiO2)粒子を新規に創製し、骨セメント組成物(ポリメタクリル酸メチル(PMMA))に混合するだけで、高い機械的強度を示し、骨と結合する生体活性骨セメント(PMMA-TiO2)を作製することである。 平成26年度は、平成25年度に引き続き、酸化チタン粒子自体の表面機能を積極的に制御するという視点から生体活性能を向上させることを試みた。熱処理を行った粒子を擬似体液に所定時間浸漬した後、結晶相をX線回折により同定するとともに、SEM-EDSにより擬似体液浸漬後の粒子断面を元素マッピングし、粒子表面に形成した水酸化アパタイト(HAp)の被覆状態を把握した。 その結果、酸化チタン前駆体を極少量の酸素を含む(PO2=10-13 Pa)窒素雰囲気中で熱処理して得られるルチル型の酸化チタンは、アルゴン雰囲気中(PO2=10-13 Pa)または大気中(PO2=104 Pa)と比べて、擬似体液中におけるHAp形成能が高いことが明らかとなった。熱処理後の粒子のTGカーブおよび格子定数の測定結果から、酸素空孔が窒素およびアルゴン中で熱処理した場合には存在しており、また、X線光電子分光法による測定結果から窒素中で熱処理した場合のみ導入窒素の存在が確認できた。よって、酸素空孔および導入窒素の存在がHAp形成能向上に寄与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度は、高いHAp形成能を有する酸化チタン粒子の作製方法を確立することを目的とした。 従来の空気中で熱処理した場合、さらに同じ低い酸素分圧下でもアルゴン雰囲気中での熱処理に比べて、格段にHAp形成能の高い酸化チタン粒子を作製するための至適酸窒化処理条件を確立した。(達成度100%)
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、酸化チタン前駆体を極少量の酸素を含む窒素雰囲気中で熱処理を行うと、純チタンの酸窒化処理により形成される酸化チタンスケールと同様に高いHAp形成能を有することがわかった。 平成27年度は、窒素中(PO2=10-13 Pa)で熱処理して作製した酸化チタン粒子をPMMA骨セメントと混練し、その上での細胞学的生物学的評価を行い、酸化チタン粒子を混練しない場合と比較を行う。さらにPMMA-TiO2骨セメントの機械的特性の評価も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の計画は予定通りに行うことができ、順調に実験が進んだために予定していたほど消耗品を購入せずに済み、物品費および旅費等で総額約24万円の残額がでた。平成27年度に、海外出張を含む成果発表を予定しているため、平成27年度は144万円の予算で研究を進める。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、高いHAp形成能を有する酸化チタンを多量に作製し(窒素雰囲気中、PO2=10-13 Pa)、PMMAと混合しPMMA-TiO2骨セメントを作製する。PMMA-TiO2骨セメントの機械的特性(圧縮強度等)および細胞学的評価を行う。消耗品費で試薬および雰囲気ガス、装置用部品等を計上した。PMMA-TiO2骨セメント上での細胞学的評価および分子生物学的評価を行うために、細胞実験用消耗品を物品費で計上した。 最新の成果動向の調査や成果報告のための学会発表(海外を含む)を旅費の細目で計上し、学会参加費および論文投稿をその他の細目で計上した。
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