研究課題/領域番号 |
25420768
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
佐伯 功 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50235090)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電気めっき / 複合めっき / 表面イオン吸着 |
研究実績の概要 |
平成26年度は以下の項目に関して検討を行った。 (1) Zn-アルミナ複合めっき系における複合めっきメカニズムに関して,引き続き検討を進めた。めっき操作条件の内,溶液中粉体濃度と溶液pHおよび電流密度に関して詳細に検討した以下の結果を得た。1)粉体含有量の増加とともに複合めっき膜中のアルミナ含有量は増加し,頭打ちになる。2)pHが増加するとアルミナ含有量は増加するが,アルカリ領域では傾向が逆転して減少する。3)電流密度が増加すると粉体含有量は減少する。これらの結果のうち,1)と2)は前年度に詳細検討したクロミアと同じ傾向であり,複合電析はカソード-粉体間の静電相互作用と,粉体表面吸着亜鉛イオン濃度によって左右される事を確証した。一方,3)は結晶構造が同じアルミナとクロミアで逆の結果となった。この2つの酸化物での表面吸着亜鉛イオン濃度を比較するとクロミアの方が高く,この差が電流密度の影響を左右していると推察した。 (2)複雑形状を持つタービン動翼へのNi-Al複合めっきの検討を開始した。Al粉末を熱処理することにより表面をアルミナとし,Ni-Al複合電析を試みた。複合電析挙動に対する浴中粉体濃度,およびpHの影響は(1)に述べたZn-アルミナ系と同様の傾向であったが,膜中Al含有量は実験ごとのばらつきが大きく,これを改善する取り組みとしてAlの熱処理条件を中心に粉体の改質の検討を進めた。いまだ不明な点が多く検討を継続する必要がある。従って本来の目的であった複雑形状物へのめっきには至らなかった。 (3)SiC―Ni複合めっき実験を行い,この系も酸性域ではpHの増加とともに膜中のSiC含有量が増加した。そこでpH4でMg合金上に)SiC―Ni複合めっきを行い,往復作動形摩耗試験機を自作して摩耗挙動を調べた結果,1 vol%程度SiCを含む膜のコーティングでMg合金の耐摩耗性は大幅に向上することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,複合めっき浴中粉体粒子濃度を現在用いられている数値から大幅に低減しためっき浴を開発し,その浴を用いた複合めっきプロセスを確立することである。 この目的達成のために,複合粉体表面へのめっきイオンの化学吸着に着目し,(1)表面イオン吸着量を大きく変えるために必要な,広いpH 領域で作動可能なめっき浴を見出し,(2)見出された浴を用いて複合めっき膜組成に対するめっきイオン濃度とpH の影響を詳細に検討し,(3)温度,電流密度,粉体濃度,粉体の表面物性,めっきイオンの種類と濃度,およびpH を変数として複合めっき制御を数式化する。最終的に式を用いて目的とする粉体使用量を低減した複合めっきプロセスを確立しようとしている。 平成26年度は項目(2)に関しては遅れがあるが,その他はほぼ予定通り進行したと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ,当初の研究計画から大きな変化はなく,平成27年も予定通り,以下の項目を検討してゆく。 (1) 前年度の検討で見出されためっき系-粉体の組み合わせを用いた実験検討と複合めっきモデルの一般化 (2) 粉体使用量を大きく減じた複合めっき膜作成実験 (3) 複雑形状物への複合電析実験
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度計画(2)の複雑形状物への複合電析実験が少し遅延したため,予定の支出がなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
遅延を取り戻し,予算執行する。
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