研究課題/領域番号 |
25420769
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
呉 松竹 岩手大学, 工学部, 准教授 (30633573)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自動車端子・コネクタ / スズ・銀多層めっき / 耐熱性 / 電気接続性 / 耐食性 / 耐摩耗性 / 電気めっき / 銅合金基板 |
研究概要 |
近年、自動車の電装化の急速な進展に伴い、様々な電子機器に接続する端子・コネクタ材料に対する電気接続信頼性の要求が益々高まっている。 本研究では、工業プロセスで製造された銅合金素材上へのリフローSnめっき材を基材とし、AgめっきとSnめっきを精密に制御することによりSnめっき表面に20-300 nm厚さのAg3Sn合金薄膜を被覆し、様々の層構造を有するナノ積層型Sn/Ag3Sn系多層めっきを作製することができた。また、実際の使用環境に想定して、各種めっき仕様の構造安定性、耐熱性および耐食性を評価し、そのメカニズムの解明を試みた。 その結果として、真空中および大気中における加速加熱試験により、めっき表面のAg3Sn合金層は、Sn融点を超えた260℃~400℃までの高温環境下でも安定であることが確認された。これにより、Sn融点以上の高温環境にも使用可能であることが示唆された。また、Sn/Ag3Sn系多層めっきは、260℃で500hの長期間連続熱処理においても、電気接触抵抗の上昇は僅か1-6%であり、高温でも優れた電気接続信頼性を有することが認められた。 また、JIS標準に準じて耐硫化性の加速試験により、Sn/Ag3Sn多層めっきは従来のAgめっきより遥かに優れた耐変色性および電気接触抵抗安定性を示し、Ag3Sn合金の耐硫化性が純Agよりも高いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①予定通り、多様な層構造を持つSn/Ag系多層めっき材を作製することができた。 ②めっき層構造に対する熱安定性は200℃~400℃の範囲で評価した。 ③耐食性(耐硫化性)の評価までに行った。
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今後の研究の推進方策 |
①Sn/Ag系多層めっきの耐熱性評価およびそのメカニズムの解明:貴金属めっきの代用を目指して、一般車の特殊端子の使用温度200℃(Sn融点以下)、そして、電気自動車関連の特殊端子部品に準じた260℃(Snの融点以上)の高温環境において、めっき層と素材との間の合金元素の相互拡散挙動、Cu-Sn合金に対するAgの固溶とAg3Snに対するCuの固溶状態、耐酸化性と電気接触抵抗安定性との相関およびその耐熱メカニズムを解明する。 ②Sn/Ag系多層めっきの耐食性評価およびメカニズムの解明:自動車端子材だけではなく、様々な電子機器への応用に展開するために、複合環境耐候性試験などを行い、そのメカニズムを解明する。 ③Sn/Ag系多層めっきの耐摩耗性の評価:自動車走行中の振動やアイドリング時の振動に対する微摺動摩耗性および、電気自動車の高速充電器に対する耐摩耗性および減摩性に対して、様々なSn/Ag系多層めっきの硬さ、摩擦係数、および耐摩耗性に及ぼすめっき層構造の影響を調べ、そのメカニズムを解明する。
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