研究実績の概要 |
本研究は,次世代の超軽量構造材料として注目を浴びているMg-Y-Zn系合金の組織制御を行い,機械的特性の更なる向上に向けた設計指針を提案することを目的とする。この合金系は長周期積層構造相(LPSO相)とα-Mg固溶体相の2相共存下で高い機械的性質を発揮するが,鋳造段階でLPSO相が形成されることから,鋳造凝固後の熱処理のみに依存した組織制御は困難とされ,押出し加工のような強加工を経て母相の微細粒化を図る以外には,強度改善を目指した組織制御の研究はほとんど行われてこなかった。そこで本研究では,第4,第5の合金添加物としてYやZnの一部をその他の希土類元素(RE=Ce, Gd)やAlで置換した種々の時効析出合金の作製を試みるとともに,加工熱処理の最適化を図ることで,これらが組織・構造に与える影響を調査し,機械的性質の向上の可能性を検討した。 平成25~26年度の研究を通じて,(1)Mg97Y2Zn1もしくはその周辺組成の合金にCeを微量添加し,これに低温時効を促すとLPSO相と規則化GPゾーンの併存組織が現れる。(2)Mg97Y2Zn1もしくはその周辺組成の合金にAlを微量添加することでLPSO相の底面規則化が進行し,長周期規則構造相(OD-LPSO相)が現れる。さらに平成27年度の研究から,(3)Yの一部をGdで置換し,Znの代わりに少量のAlを添加したMg-Al-Y-Gd合金において,OD-LPSO相とMg7RE型の析出物の併存組織が現れるとともに,(4)時効処理に先立って圧延処理を加えることで時効析出組織の微細分散化が進み,強度向上に繋がることがわかった。こうして,以上のような合金添加と加工熱処理を最適化することによって,時効析出組織のハイブリッド化や微細分散化が進行し,Mg97Y2Zn1合金の機械的性質の向上をもたらす組織・構造制御が可能になることが分かった。
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