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2013 年度 実施状況報告書

微生物の代謝反応が誘導する金属の腐食機構を応用した発電システムの開発に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 25420771
研究種目

基盤研究(C)

研究機関秋田大学

研究代表者

宮野 泰征  秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60466589)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード微生物腐食 / アノード / カソード / マクロセル / ミクロセル / 電位 / 自然電位 / オキシターゼ
研究概要

課題研究の重要事項の一つである電極反応の向上を目的に以下の検討を行った。
①カソードを独立・機能的に配置したマクロセル構造を有する新規の実験系として設計・再現し、腐食反応の促進すなわち電極反応向上の可能性について検討をおこなった。微生代謝機能を疑似したモデル化学物質による電極反応に関する検討 微生物腐食を誘導する反応物質としては、微生物代謝に由来するカルボン酸、乳酸、アンモニア、過酸化水素 などの他に、オキシターゼなどの酵素などが知られているが、今年度は特に、過酸化水素を中心に検討を行った。
②微生物の中には、還元反応時の電子の消費を触媒し 、H2を生成するものもいる。研究の第一段階では生物的な因子を排除した単純な実験系(非生物系)のもとで、 上記化学物質を市販の化学薬品(モデル化学物質)を実験パラメータとした実験系として、オキシターゼの存在と電位の相互作用について検討を行った。
③金属電極を対象とした電位応答に関する検討 本研究が目指す発電システムは、微生物が誘導する金属の腐食溶解反応を電極反応に応用するものである。現 在、微生物燃料電池として検討されているシステムの多くは、電極に貴金属、またはカーボンなどの非消耗の電 極を使用しているため、本研究と原理は異なる。基本方針として、環境と電位の相互作用に関する基礎データが 豊富で汎用性の高いステレス鋼を主な電極材料に設定し検討を進める。アノード/カソード間の電位の形成を誘導するため、耐食性の異なる鋼種の検討として、溶融溶接、合金元素の溶接部への添加等により耐食性を低下させた材料による電極パ ラメータを設定し、実験系と電位の相互作用を検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請者は、微生物腐食の誘発因子の研究に取組む過程で、微生物腐食を原理とする発電システム(電池)開発 の着想を得ており、研究開始時には既に予備実験に着手していた。特に、微生物存在環境では金属の腐食電位の変動等については、測定を定常的に実施できる環境も整っており、研究の立ち上げを速やかに遂行することができた。
申請研究は、電位変動と微生物の生理機能(代謝)の相関を検討した微生物腐食機構モデルをラボレベルで人工的に再現することである。昨年度はカソード反応の検討に重点をおくことで、マクロセルを再現するための知見の獲得できたが、アノード反応の検討については、十分なペース配分ができなかったと反省している。後者については、本年度の課題として取り組んでいく所存である。

今後の研究の推進方策

前年度検討した実験パラメータから電極反応の向上が期待できる条件を導出していく。微生物腐食機構をモデル物質で疑似的に再現した実験系(マクロセル)を対象に、動電位分極曲線の測定と、定電位保持時の電流密度の測 定を実施し、電極でのアノード/カソードの電極反応の実態を解明する。
アノードの孔食発生電位、カソードの 応答が限界電流密度を示す電位を特定し、定電位保持時の電流密度の応答、電極反応に関連する化学物質の生成 /消費の挙動、電極が受ける腐食影響などを詳細に検討する。電気化学的な検討で得たこれらの実験結果からこ のシステムの発電能力を理論値として推定していく。このような、非生物系での検討結果を基に、生物的環境で微生物腐食機構を効率的に再現するための検討を行う。電極反応の効率化を実現する化学物質、反応条件を特定し、その生産/消費に関連した生化学的機能を持つ微生物 を選定する。微生物の活動レベルと電極反応の相関について検討し、電極反応の向上に寄与する培養条件を導出する。
電極反応の効率的再現下での、微生物の代謝挙動(反応物質の生成/消費)、バイオフィルム構造を解析 し、「金属と生物細胞の相互作用」に関する新知見を得る。
電極反応の向上に寄与する培養条件の導出 微生物腐食機構の効率的再現に寄与する可能性の高い微生物を選定し、それらの微生物をアノードとカソード の各反応容器に効率的に配置しマクロセルを形成させる。リアルタイムで電極反応をモニタリングしながら、微生物の活動レベルの電極応答を解析し、電極間の反応が活性化に導かれる培養条件を導出する。モデル化学物質 を使用した際の検討で理論値として求めた発電能力との比較検討を行う。

次年度の研究費の使用計画

当初、研究費での新規導入を予定していたガスクロマトグラフィーについては、実際に購入した場合、研究予算に占める費用の割合が極めて大きくなってしまうため、全体の研究計画の遂行に障害をきたす可能性が考えられた。ガスクロマトグラフィーに関しては、研究協力者の所属機関に比較的低い制約下で使用可能な装置があることから、現在研究研究協力者のサポートを得ながら研究計画を遂行する方法を模索中である。
研究テーマの遂行には電位測定が必要不可欠な評価手段である。自然電位、分極などの電位測定については、研究代表の所持する装置で初年度は問題なく研究を遂行してきた。しかし、研究進捗の過程で、電極間の電位移動の評価に、エレクトロインピーダンス法などの評価手法も導入すべき余地が考えられるようになってきた。この解析手法を実施する設備は現在有していないため、デモ等で予備的検討を進めながら使用計画の策定を進めている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014 2013

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] THE USE OF CONTINUOUS-OPTIMIZING CONFOCAL REFLECTION MICROSCOPY (COCRM) FOR STUDYING INTERACTIONS OF BACTERIAL ATTACHMENT WITH STAINLESS STEEL WELDS2014

    • 著者名/発表者名
      Yasuyuki Miyano, Tomohiro Inaba, Nobuhiko Nomura
    • 学会等名
      The17th International Congress on Marine Corrosion and Fouling (ICMCF)
    • 発表場所
      The Stephen Riady Centre at the National University of Singapore
    • 年月日
      20140706-20140710
  • [学会発表] ナノレイヤー製膜プロセスを応用した金属の新規抗菌評価法に関する研究2014

    • 著者名/発表者名
      宮野泰征, 古川壮一, 森永康, 太田瑛美, 栁原希枝子, 本城国明, 木内正人
    • 学会等名
      材料と環境2014
    • 発表場所
      一橋講堂:学術総合センター
    • 年月日
      20140518-20140520
  • [学会発表] New Bioassay to Evaluate the Minimum Antibacterial Mass of Metallic Copper Using Cu Thin Coating2013

    • 著者名/発表者名
      Yasuyuki Miyano, Kuniaki Honjo, Osamu Kamiya, MasatoTakahashi, Masato Kiuchi
    • 学会等名
      The 7th International Conference on Materials Engineering for Resources
    • 発表場所
      Akita View Hotel
    • 年月日
      20131120-20131123
  • [学会発表] Siウェハーに薄層した微量抗菌性金属と微生物の相互作用2013

    • 著者名/発表者名
      宮野泰征, 本城国明, 稲葉和大, 野村暢彦, 古川壮一, 木内正人
    • 学会等名
      一般社団法人日本鉄鋼協会秋季講演大会
    • 発表場所
      金沢大学角間キャンパス
    • 年月日
      20130917-20130919

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公開日: 2015-05-28  

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