巨大ひずみ加工の一つである,高圧ねじり(HPT)加工をCu-Be系合金,Cu-Ti系合金をモデル材料として用いて,SPD加工後に続く,自然時効中の格子欠陥密度変化を,透過型電子顕微鏡法,電気抵抗測定,X線回折法,示差熱分析法,陽電子分光測定法といった,多角的アプローチから定量的に計測し,それぞれの格子欠陥密度と続く人口時効時の析出硬化挙動の関連性について検討を行った.ここで,Cu-Be合金は,G.P.ゾーンの核形成を経て析出硬化が生じ,Cu-Ti合金では,スピノーダル分解を経て時効効果が生じる. HPT加工により高密度に導入された格子欠陥(粒界,転位,空孔)のうち,粒界密度(結晶粒径),転位密度は最長1ヶ月間の自然時効においても,ほとんど変化が生じないのに対して,空孔は室温程度の低温でも回復が生じ,その濃度が低下することを明らかにした.さらに,この空孔濃度の低下に依って,Cu-Be系合金では,室温保持時間の増加により,析出硬化能が減少するのに対して,スピノーダル分解によって析出硬化が生じるCu-Ti系合金ではほとんど影響を受けないことを明らかにした.
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