チタン源であるチタン乳酸錯体:チタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドと、硝酸アンモニウムを含む水溶液を用いて、間接電解による製膜をおこなった。ステンレス板をダミー電極とし、マスキングテープをスぺーサーとして、これらを挟む形で、目的とする基板:石英ガラスを、ダミー電極近傍に向い合せに設置した。対極をPt板として定電流電解還元し、目的とする基板上に酸化チタン膜を製膜した。XPSとXRDを用いて膜のキャラクタリゼーションをおこなった結果、析出したままの膜は二酸化チタン(TiO2)で結晶状態はアモルファスであったが、膜を450℃で熱処理すると、アナターゼ型の結晶へと変化した。また熱処理した膜について、拡散反射スペクトルから光学的バンドギャップを求めた結果3.2eVであった。 さらに、色素増感太陽電池用電極として特性評価に重点をおいて検討した。透明電極上5mm角の面積に作製・熱処理し、Ru錯体色素(N719)エタノール溶液に浸漬して、色素を吸着させた。対極Pt、I3-系電解液を用いて太陽電池を構築して、変換効率を測定した。1回の製膜・熱処理で作製した膜では、変換効率1.6%であったが、製膜・熱処理を2回くりかえした結果、2.1%に向上した。1回の製膜・熱処理ではクラックが大きく、透明電極とI3-系電解液が接触してしまっていたことが、1回では特性が不充分であった原因といえる。製膜・熱処理を7回くりかえして得た膜について、変換効率5.3%を記録した。当初の平板電極での目標値をクリアした。この膜の厚さは6.0μmであった。さらに、11回までくりかえして得た膜は厚さ9.1μmで、増膜ができていたが、変換効率は4.9%と低下した。回数を増やせばさらなる厚膜化は可能と思われるが、現在のところ太陽電池としての最適な条件はくりかえし7回程度と考えられる。
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