研究課題/領域番号 |
25420783
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研究機関 | 株式会社豊田中央研究所 |
研究代表者 |
伊関 崇 株式会社豊田中央研究所, 材料・プロセス1部 表面機能・凝固応用研究室, 主任研究員 (60394897)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DLC / 中性子 / 動径分布関数 |
研究実績の概要 |
本年はDLC膜の構造解析として中性子散乱実験を中心に行った。重水素化炭化水素を前駆体とするプラズマCVD法により鉄系基板上にDLC膜を形成させ、これらの膜を自然剥離させ粉末状とした。その後、粉末試料をバナジウム管に封入し、J-PARCのBL21(NOVA)で中性子散乱測定に供した。 実験には核破砕反応で発生した白色の中性子を用い、試料で散乱された中性子をHe-3中性子検出器で検出した。散乱中性子の波数(Q)が中性子の速度に比例することを利用して、Q範囲が0.2~100(1/Å)の散乱スペクトルを得た。 散乱スペクトルから動径分布関数を算出した結果、5Åまでの領域に7つのピークが認められた。そのうち5つのピークは人造黒鉛のピークの位置と一致したことから、これらのピークは炭素原子同士の原子間距離に由来すると考えられる。また、人造黒鉛にはないピークとして1.1Å、2.1Åにそれぞれ、C-D間距離、C-D結合したDと隣接するCとの距離に相当するピークが確認された。このような水素に起因する構造はX線散乱などでは認められておらず、DLCの終端構造を知る上で重要な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度から、DLC膜の微小角X線散乱、中性子散乱を行い、良好なスペクトルが得られており、当初の計画通り概ね順調に進展している。 今回の中性子散乱実験において、当初、通常の軽水素を構成元素とするDLCでは、Hの影響で散乱時に大きな非弾性成分を有し、バックグラウンドが大きくなる問題が生じた。 重水素化したDLCを用いることで、非弾性散乱を抑制し、より高い確度の散乱スペクトルが得られ、水素に関する構造が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きGIXS、中性子によるDLC膜の構造解析を進めるとともに、NEXAFS実験によりσ結合、π結合の同定も実施する。同時にDLC膜の機械的特性をナノインデンテーションにより実施し、機械的特性と構造との関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
外部委託する分析用の試料作製が十分できず、情報収集の学会出張が社内業務の関係で困難であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
外部分析メーカに本年中に水素分析依頼を行うとともに、DLC関連の学会出張を行い、使用する。
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