H27年度は、まず、圧入荷重を一定にできるプレス機を用い、アルミシリコン合金の半凝固スラリーの初期固相率を変化させて、砂型にスラリーを圧入成形することで、半凝固スラリーの流動性および成形性について評価する方法について検討した。その結果、高固相率になるほど、流動長は長くなるという、チクソトロピー性が発現することを確認することができた。ただし、成形体の組織を調べたところ、初晶の球状アルミの分布が、加圧条件や設定する初期固相率および成形体の形状によって変化することが分かった。各種パラメータを変化させて、得られる成形体の組織について調査した。その結果、採用した砂型への圧入試験法は、次のような特徴があることが分かった。(1)砂型においても、低固相率から高固相率まで、良好な成形性を得ることができる。(2)成形体に観察された花弁状組織は表面積が大きく、互いにネットワークを形成し粒子が粗大になりやすいため、組織分布の不均一を引き起こしやすい。(3)初晶アルミの形状や鋳型肉厚を変化させることにより、成形体に観察されるα初晶の不均一分布を改善することができる。(4)初晶形状や圧入条件によりα初晶が流動できる鋳型厚さの閾値が存在する可能性がある。次に、別途、導入した小型のダイカスト機を用いた流動性実験を行った。射出スリーブ内で半凝固スラリーを生成するスリーブ法を開発し、半凝固鋳造実験を行ったところ、この場合でも初期固相率が高いほど流動長が長くなることを確認した。最終的に、これらの実験結果から、鋳造CAEシステムADSTEFANを用いて、流動・凝固挙動をコンピュータシミュレーションする際に必要な各種パラメータをサーベイし、データベース化した。
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