研究課題/領域番号 |
25420787
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
麻生 節夫 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80167915)
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研究分担者 |
後藤 育壮 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10632812)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 複合材料 / 部分強化 / 鋳ぐるみ / 高温耐摩耗 / サーメット / 溶浸 |
研究概要 |
平成25年度は「耐熱鋼を母材とした局部強化高温耐摩耗性複合材料の製造と硬さの評価」目的として次のことに取り組んだ. 1.複合化に適する強化材の作製:強化材サーメットのCO2プロセスによるプリフォーム化として,Niを電解メッキした種々のサイズのサーメットを用い,これにNiやCr粉末と混合し,CO2プロセスで作製したφ45mm×5mmのプリフォームを作製した.また,強化材サーメットの真空焼結によるプリフォーム化として,NiおよびCr粉末を母材(耐熱鋼SCH24)のNi,Crと同じ割合6:4に配合し,これをサーメット粉末と混合し,加圧成形したものを真空焼結してプリフォームとする方法で,(1)に比べると工数は多くなるが,水ガラスなどの混在を防ぐことができる.サーメットの粒径,形状の異なる4種類のプリフォーム(φ25×4mm)を作製し,これらを強化層とした試験片を作製することができた. 2.鋳型の作製:強化材とのぬれ性の確保には,溶湯表面の酸化膜の形成防止や鋳造後の急激な温度低下を避ける必要があるため,保温効果のある発熱材を鋳型に用いた.これにより,凝固時の熱流方向や凝固時間の制御が可能となった.また,強化層の形成位置の制御を目的に,消失模型法と上記のプリフォームを組み合わせることでφ50mm×75mmの試験片の底部にφ45×5mmの強化層を形成することができた.さらに,鋳型空洞部に固定したプリフォーム上下に段堰を設けることにより,溶湯流と凝固速度の制御がある程度可能となり,強化材を試験片の長手方向中間部に形成させることに成功した. 3. 凝固シミュレーションによる複合化条件の解析:2(2)項に関連して,段堰からの溶湯の流入と凝固時の冷し金の効果の解析により,プリフォームを所定の位置に保持し,強化層を形成するための条件を把握することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.局部強化高温耐摩耗性複合材料の作製 耐熱鋼鋳鋼SCH24を母材として,サーメット粒子を部分的に分散させた,局部強化高温耐摩耗性複合材料を作製するために,2つの方法で試料作製を行った.第1の方法は,当初予定していた消失模型法に強化材プリフォームを組合せた方法である.これにより,φ40mm×5mm程度の複合層の形成が可能となり,26年度以降予定している耐摩耗性等の評価に必要なサイズの試料を作製するめどが立った.第2の方法は新たに取り組んだ真空焼結法によるプリフォームの採用である.これにより,サーメット粒子とバインダ金属粉末の混合割合の調整が容易になった.また,耐熱鋼鋳鋼は製品歩留りが60%程度であるが,発熱鋳型を用いることで,凝固収縮が低減されて試料の歩留りが90%以上に向上した.さらに,サイズの小さい試験片でも凝固速度が遅くなるため,凝固条件の影響を評価することが可能となった.発熱鋳型の採用とプリフォームの組合せにより,強化層を試料の端部のみならず中間部にも形成することができた.具体的には,鋳型キャビティ中間部に配置したプリフォームの上下に堰を設け,プリフォーム底部が先に凝固するように冷し金を配置することで,試料中間部に強化層を形成することができた. 2.強化層の評価 上記の複合化プロセスをシミュレーションにより検証し,結果の裏付けとするとともに今後の試料作製に反映させることが可能となった.また,複合化層については,マイクロスコープおよび科研費で購入したマイクロビッカース硬さ試験機で評価した結果,複合化層内のサーメット粒子の組織と硬さの関係を明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の目的は,「耐熱鋼を母材とした局部強化高温耐摩耗性複合材料の800℃における高温摩耗および高温酸化の評価」である.これを達成するために以下の項目について実験を実施する. 1. 試料作製:高温摩耗試験および高温酸化試験を行うための試料作製については,平成25年度の実績に基づいて高温摩耗試験および高温酸化試験を行うための試料の作製をおこなう.具体的には端部に複合化層を形成させた円柱状試験片を作製し,この試験片の複合化層を含む領域をφ30~40×10mmのディスク状に加工して高温摩耗試験に供する.なお,課題として,耐摩耗性を評価する試料については,サーメット粒子の形状,サイズ,金属粉末との配合割合について検討を行って種類を絞り込む予定であるため,評価については平成27年度も継続して実施することも想定している.また,平成27年度に予定している複合化層を含む材料の曲げ強さ測定のための試料の作製を行う.平成26年度に曲げ試験用の治具の購入を予定しているので,測定条件を検討するため曲げ試験の試行を行う予定である. 2. 強化層の評価:高温摩耗試験および高温酸化試験については,最高温度800℃まで評価できるピンオンディスク型高温すべり摩耗試験機により,複合化層の高温すべり摩耗特性を評価する.相手材には高温硬さが高く,耐酸化性に優れるセラミックスボールを用いる予定である.また,熱重量測定装置を用いた高温酸化実験あるいはマッフル炉中での加熱実験により,1000℃までの強化層の耐酸化性を評価する.
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