研究実績の概要 |
高性能かつ低コストの排水処理法として金属Mgの強い表面活性を利用した新しい技術による排水処理システムを実用化していくためには、処理の定量評価とそれに基づく最適化が必要である。 27年度は、Ni, Bを含む溶液に金属Mgを添加して得られた沈殿物の洗浄と乾燥方法を見直しXRDにて同定を行ったが、Bを含むピークは確認できず、除去機構の解明に至らなかった。 Bを含んだ原水に金属MgとHClと処理助剤としてFeを添加する回分式処理試験で、液中にMg2+が供給されpHが上昇、Fe(OH)xが析出しBが共沈除去された。また、生成したMg(OH)2にBが吸着することでも除去された。生成したFe(OH)xやMg(OH)2と未反応の金属Mgをろ別し、ろ液にNaOHを添加してpHを上げ液中のMg2+をMg(OH)2として析出させる二段階処理により残留B濃度を排水基準値よりも一桁低く、下げることが出来た。 以上を含めて、研究期間全体を通して以下を明らかにした。除去物質を含まない金属Mgの酸化溶解とMg(OH)2の析出の基本現象を定量評価した。溶解Mg量は酸が放出する水素イオンの量と対応し、生成する不安定なMg(OH)2も熟成で安定化し、pHが低下した。金属Mgの水溶液中での挙動について平衡計算を行い、実験データとは、pH, ORPの絶対値が違うものの傾向は一致していることを確認した。Niメッキで発生する洗浄排水に含まれるNi, Bを除去処理するため、共存元素の影響や処理助剤の効果と除去機構の解明を目的に試験を実施した。金属Mgの添加だけでもNiは排水基準値以下になるが、Bは排水基準値以下まで下がらない。MgCl2を供給するHCl 0.49mol/L以上の添加で、Bは排水基準値以下になった。さらに、Fe添加の二段階処理法を提案し、排水基準値よりも一桁低い残留B濃度にできることを示した。
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