研究課題/領域番号 |
25420796
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
江阪 久雄 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 教授 (40531992)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 等軸晶 / 組織微細化 / 形態複雑化 / マクロ偏析 / 凝固組織制御 |
研究実績の概要 |
Al-Cu合金を用いた鋳造実験を行い、凝固組織とマクロ偏析の関係を調査した。Ti-B系の微細化剤の添加により等軸晶化することを利用し、かつその添加量を調節することにより等軸晶の粒径を制御した。また、鋳造直後に加振機(科研費での購入物品)により振動を与えることにより等軸晶の形態を制御した。すなわち、振動と振幅を適切に制御することにより、固液界面形態を複雑化することができる。基礎実験により微細化剤の添加量と振動の印加条件を調査し、以下のような4水準の組織形態を得ることができることを確認した。(1)微細でシンプルな形状、(2)微細で複雑な形状、(3)粗大でシンプルな形状、(4)粗大で複雑な形状、である。 この基礎実験のデータを用い、故意にマクロ偏析を生起させることができる鋳型に鋳造してマクロ偏析の生成について検討した。Al-Cu合金の共晶組織の量を測定することによりマクロ偏析を定量化できることを予備実験で確認しているため、今回もその手法を用いて評価した。その結果、等軸晶化することによりマクロ偏析が軽微になるが、今回の実験の範囲では微細でかつ複雑な形状のものが最もマクロ偏析を抑制することが明らかになった。 このメカニズムとしては以下のことが考えられる。凝固収縮に伴い樹間の液相が最終凝固部に吸引されるが、等軸晶サイズが小さくかつ形態が複雑であれば、この流動に対する抵抗が大きくなるため、最終凝固部に樹間液相が流動しにくくなるためにマクロ偏析が抑制できたものと考えられる。重回帰分析を行い、微細化の効果と形態複雑さの効果を検討したところ、微細化と複雑化は同等の寄与をしていることが明らかになった。また、当該合金についてマクロ偏析を抑制するための必要サイズと形態複雑さの必要条件の範囲を明確にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
るつぼ鋳造による予備実験が予想以上に順調に推移し、本格的なマクロ偏析を生起させる鋳型への鋳造実験もほぼ計画通り実施することができた。 組織形成のための仮説の提示やその検証実験についても一部始めることができており、順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
振動の付与による組織形態が複雑化した理由について、現在のところ液相と固相の相対運動により、固相界面にパイルアップした溶質が洗い流される効果であろうとの仮説を考えている。水モデルを中心に、メカニズムの確認を実施する。 その他、全体を通してのレポートの作成と鉄鋼材料への展開について検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究がおおむね順調に推移したため、予想していたるつぼ等の実験用の資材の消費が少なくて済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
メカニズム解明のために当初予定していたものとは別の物品を購入する計画である。
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