Al-Cu合金を用いたラボサイズの実験を行い、等軸晶の径と形態を制御することによってマクロ偏析を低減できる見通しを得た。具体的には、等軸晶粒径を細かくし、かつ形態を複雑にすることによってマクロ偏析の生成を抑制できる。凝固末期に残存する、溶質を濃縮した液相が凝固収縮等のために発生する負圧のために樹間を流動して、特定の場所に集中することによってマクロ偏析が生成すると考えられる。等軸晶の微細化および形態複雑化は凝固末期の液相流動のための抵抗を大きくして、流動を抑える作用があるためであると考えられる。 ラボ実験ではTi-Bを含有した微細化剤の量を変えることによって不均一核生成の程度を変えて、等軸晶の粒径を制御した。また、鋳型に注入直後に機械的振動を加えることにより、等軸晶形態の複雑さを変化させた。形態複雑さを振動条件によって変化させることができたメカニズムについて、エチルアルコール水溶液とプラスチックのトレーサー粒子を用いた可視化実験を行って詳細に検討した。液相と粒子との密度差に基づく相対運動が認められ、その相対運動は、振動数が高いほど、振幅が大きいほど、液相の粘度が低いほど大きくなることが明らかになった。この相対運動によって固液界面前方に形成された溶質拡散層が洗浄を受けることにより、組成的過冷却が大きくなって、固液界面の形態が複雑になったものと考えられる。 鋼の連続鋳造にこの考え方の適用の可否を検討するために、鋳造温度制御と脱酸手法等の工夫による等軸晶サイズおよび形態の制御技術の基礎的検討に発展させたい。
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