研究実績の概要 |
数ミクロンから数ナノメートルの間隙(ナノ・マイクロスケール空間)を液体が透過する際に生じる圧力損失に関して、界面科学に基づく空間間隙評価の方法論の開発を行った。圧力損失場としてフィルターに補足された微粒子が形成するケーク層を対象とした。ケーク層の圧力損失は粒子間の間隙を液体が透過することにより生じるため、その本質的理解にはケーク厚、空隙率や粒子間間隙の大きさなど空間的な情報が必要となる。本研究では微細な空間の構造を反映する界面動電現象として流動電位に着目し、ケーク層の粒子間間隙の評価方法の開発を行った。既往の評価法であるケーク比抵抗やコゼニーカルマン式、ハーゲンポアズイユ式との比較を行い、流動電位法の妥当性について検討した。 対象微粒子として、球形粒子であるPMMA粒子、JIS粉体(関東ローム、重炭酸カルシウム)、反応晶析による難溶性無機結晶(PbSO4, Zn(OH)2)などの物質を選び、物質の種類、粒子径、粒子形状が粒子間間隙に与える影響を検討した。ケーク層の流動電位およびケークの高さが測定できる装置を開発した。得られた測定値から、ケーク比抵抗および粒子表面電荷密度、粒子間間隙を評価する解析方法についても開発を行った。自由度が2である流動電位の解析を塩濃度依存性の解析により自由度を0とする方法について検討しその妥当性を確認した。 開発した方法に基づき、各種ケーク層の間隙および表面電荷密度の評価を行い、流動電位法により評価された粒子間間隙は、既往の評価結果に対して低い値であったがリニアな関係を示し、粒子間間隙評価としての利用可能であることが示された。また、表面電荷密度はケークを形成する粒子の物質に依存し、その絶対値はおよそ0.005~0.02C/m2程度の値を示すことがわかった。これらの結果より、粒子間間隙のリアルタイム評価法につながる基礎的の知見が明らかになった。
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