本研究では、ナノコロイドの湿式篩分級に適した膜のタイプについて検討し、複雑な三次元ネットワーク構造と高い空隙率を持つナノファイバー膜に着眼した。ナノファイバー膜は、三次元ネットワーク構造であることから大粒子を効果的に捕捉することができ、高空隙率であることから小粒子をスムーズに透過させることができると予想される。そこで、ナノファイバー膜と従来の精密濾過膜を用いて最も基本的な大小2成分のコロイド粒子からなる混合試料の湿式分級試験を行い、各膜の篩機能について検証した。その結果、いずれの膜でも大粒子は完全に捕捉されたが、各膜の小粒子透過率を比較すると、精密濾過膜は濾過が進行するにつれて透過率が減少する傾向を示すのに対し、ナノファイバー膜は濾過期間を通じて高い透過率を維持し、ナノファイバー膜の優位性が示された。これは、ナノファイバー膜の三次元ネットワーク構造と高空隙率の相互の結果によるものと考えられる。 膜による湿式分級操作において、撹拌による剪断流れを利用したダイナミック濾過法を適用し、種々の撹拌速度の条件下で大粒子堆積層の継続的な除去を試みた。非撹拌の濾過では濾過初期から小粒子は顕著に阻止され、分級精度は低い結果となった。しかし、撹拌操作を行い膜面上に剪断力を与えることにより大粒子の堆積量を大幅に低減することができ、回転数が大きくなるにつれて分級精度は向上した。さらに回転数を増加させると、逆に分級精度の顕著な低下が見られた。このように、膜面に作用させる剪断力には最適値があり、撹拌速度の精密なコントロールが極めて重要であることを明らかにした。 さらに、粒子や膜の荷電状態を支配する溶液環境の影響について実験的に検討した。その結果、高い分級精度を得るためには、粒子間の静電反発力、ならびに粒子-膜間の静電反発力が最も大きくなる溶液環境に調整することが必要不可欠であることを明らかにした。
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