最終年度は、水素選択透過性をもつパラジウム膜の透過性向上を目的とした薄膜化の手段として、昨年度見出した複層化した中間層(メソポーラスシリカ層とアルミナ層)を多孔質SUS支持体へ導入する方法の改善に加え、新たにシリカライト層とアルミナ層を複層化した中間層についても検討を行った。以下を最終年度の研究実績とする。 1.昨年度実施した導入法では、メソポーラスシリカ層の剥離が起こる事例があったため、その改善を目的として、調製したメソポーラスシリカ粉末を乳鉢で粉砕することで粒径を約0.8マイクロメートルに揃えた。粒径を揃えたメソポーラスシリカ粉末を用いることで、剥離は起こらなくなった。形成した中間層上に無電解めっき法でパラジウム膜を形成すると、中間層を導入しない場合に比べ、パラジウムの膜厚を約1/4に抑えた膜により、水素選択率はそのままで水素パーミアンスを1.3倍向上できた。よって、メソ孔をもつ複層からなる中間層の導入により、高い水素パーミアンスを実現できることを見出した。 2.シリカライト層とアルミナ層の複層を中間層として導入した場合には、第一層のシリカライト層形成により、支持体細孔の中間層導入による閉塞度の指標であるヘリウムパーミアンスが大きく減少し、シリカライト層のもつミクロ孔が効果的に支持体の細孔を埋めることができることが示された。その後、アルミナ層で被覆しパラジウムめっきを行うと、パラジウムの膜厚約7マイクロメートルにおいて室温でヘリウムを全く透過しない緻密膜が得られた。 3.本研究で2種の複層化した中間層について検討したところ、高い水素パーミアンスを示すメソポーラスシリカ層をもつパラジウム膜と、室温でヘリウムを透過しないシリカライト層をもつパラジウム膜が得られた。よって、水素パーミアンスと水素選択率の両者を制御する手法として、複層化した中間層が有効に機能することが示された。
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