研究課題/領域番号 |
25420805
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩井 芳夫 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80176528)
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研究分担者 |
米澤 節子 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准助教 (50294898)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 直接メタノール燃料電池 / ナフィオン複合膜 / パラジウム / 錯体 / 超臨界流体含浸法 / メタノール浸透率 / プロトン伝導率 / 電池特性 |
研究概要 |
超臨界流体含浸法を用いたPd/Nafion複合膜の作製において、Pd錯体の種類および導入量の変化による影響を検討した。Pd錯体にはパラジウムアセチルアセトナト(Pd(acac)2)、パラジウムヘキサフルオロアセチルアセトナト(Pd(hfa)2)、およびパラジウムテトラメチルヘプタンジオナート(Pd(thd)2)の3種類を使用し、セルへの錯体の導入量を0.010-0.050gと変化させた。 Pd(acac)2 / Nafion複合膜では、 粒子径50-100nmのPd粒子が分散しており、 Pd凝集体も確認された。また膜表面には0.1μm程度のPd層が形成されていた。Pd(hfa)2/NafionおよびPd(thd)2 /Nafion複合膜にはPd層が確認されず、特にPd(hfa)2/Nafion複合膜はPd粒子径が数nm-30nmとすべての複合膜の中で最も小さく、粒子数も少なかった。 Pd(acac)2/Nafion 複合膜においては、他の複合膜よりも高いメタノールブロック効果が確認できた。しかし、プロトン伝導率もそれに伴い大幅に減少した。Pd(hfa)2/NafionおよびPd(thd)2/Nafion複合膜においては、メタノール浸透率は減少したが、プロトン伝導率はあまり変化しなかった。Pd粒子径が小さい場合、プロトン伝導率にはほとんど影響なく、Nafion膜内のPd微粒子により、メタノール透過は低減できる可能性が示唆された。 直接メタノール燃料電池単セルの電池特性は、ほとんどの複合膜でNafion膜よりも優れた性能となった。特に、錯体導入量0.030gのPd(thd)2/Nafion複合膜が最も優れた性能を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、Pd錯体としてパラジウムアセチルアセトナト(Pd(acac)2)のみを用いてPd/Nafion複合膜を作製する計画であったが、(Pd(acac)2)に加えて、パラジウムヘキサフルオロアセチルアセトナト(Pd(hfa)2)、およびパラジウムテトラメチルヘプタンジオナート(Pd(thd)2)を用いてPd/Nafion複合膜を作製した。その結果、錯体導入量0.030gのPd(thd)2/Nafion複合膜が最も優れた電池特性を示すことが明らかになった。また、メタノール浸透率およびプロトン伝導率に及ぼすNafion中のPd粒子の粒径と凝集状態の影響を明らかにすることができた。このことより、電池特性の良いPd/Nafion複合膜の作製指針が得られたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、Nafion中のPd粒子の粒径と凝集状態が、メタノール浸透率およびプロトン伝導率に大きく影響を及ぼすことが分かった。つまり、Pd粒子径が小さい場合にはプロトン伝導率は変わらないが、メタノール透過は低減され、その結果、優れた電池特性を示すことが分かった。そのため、小さなPd粒子をNafion中に良好に分散させる条件を探索することが必要となった。超臨界流体含浸法の操作条件を変えることにより、Nafion中のPd錯体の浸透状況を変えることが可能である。そこで、超臨界流体含浸法の最適な操作条件を探索する計画である。
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