研究概要 |
インクジェット技術を用いた電子デバイスなどの製造プロセスでは、任意形状の微粒子薄膜をパターニングすることが重要な課題である.本研究課題は,実験とともに巨視的な液滴内流動と微視的な微粒子輸送現象を連成したマルチスケール解析により液滴乾燥による薄膜形成機構を明らかにし,任意形状の薄膜パターニング形成手法の確立を目的とする.平成25年度はライン状親水面を有するパターニング基板上における微粒子分散液滴の乾燥実験を行い,液滴乾燥および微粒子薄膜形成に及ぼす粒子径と粒子濃度の影響を検討した. 本実験では,幅100μmのライン状親水面を施したパターン基板の親水ライン面上にポリスチレン微粒子分散液滴を着液させ,液滴乾燥挙動および乾燥後の微粒子薄膜形状を観察した.微粒子平均粒子径は0.1または1.0μm,微粒子濃度は0.01, 0.1 および1.0wt.%とし,初期液滴堆積は2μlとした. 液滴は基板上に着液直後より親水ライン面上にメニスカスを形成し、親水ライン面上の接触線が固定されたまま微粒子がメニスカス先端へと輸送されて基板に堆積する挙動が観察された.粒子径1.0μm,粒子濃度1.0および0.1wt%の場合,疎水面上の接触線は後退せず着液直後の液滴形状を保ったまま微粒子は堆積した.一方,粒子濃度0.01wt%あるいは粒子径0.1μm の場合,疎水面上の接触線が後退して親水ラインに沿って微粒子は堆積した.乾燥後に得られたライン上薄膜の幅は200-300μm程度であり,基板の親水ライン面幅よりも大きかった。 以上の結果より,微粒子分散液滴の粒子径または微粒子濃度によりライン状の薄膜を形成することが可能であることが示された.今後,親水ライン面上のメニスカス形状および液滴蒸発によるメニスカス内における流動および微粒子輸送挙動を数値解析により明らかにすることが望まれる.
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