研究課題/領域番号 |
25420813
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
松本 道明 同志社大学, 理工学部, 教授 (10157381)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水性二相抽出 / 塩析 / 糖析 / コハク酸 / ブタンジオール |
研究概要 |
2,3-ブタンジオール(BD)やコハク酸は石油化学原料からの化学合成法により生産されてきたが,最近では発酵法による生産が注目されるようになってきた.しかし発酵液からのこれらの化合物の分離コストは全コストの半分以上を占め,その低減が求められている.これまで多くの分離法が提案されているが,本研究では環境負荷の小さな水性2相系に着目した.従来水性2相系で使用されたポリマー/ポリマー,ポリマー/塩系では抽出物の回収やポリマーなどの再利用性に問題があった.そこで本研究では、ポリマーの代替として低級アルコールなどの親水性の有機溶媒と塩もしくは糖を用いて水性2相系を形成させ,それらの2,3-BDおよびコハク酸分離への応用を検討した. まず種々の塩や水溶性有機溶媒を用いてバイノーダル曲線の作成,また塩析実験より,親水性有機溶媒や塩の効果を詳細に検討した.その結果に基づいて抽出実験を行ったところ,塩として炭酸カリウム,親水性有機溶媒としてテトラヒドロフランを用いた場合,ほぼ定量的に2,3-BDを有機相に抽出でき,最大3.7倍まで濃縮することができた.またコハク酸の場合には,抽出過程はpH依存性を示し,塩では酸性塩を用いた場合に最大70%の抽出率を示し,新たに糖を用いた場合も2相分離が生じた.今後は有機溶媒としてイオン液体を用いた場合および有機酸およびアミノ酸などの塩析および糖析抽出についてさらに検討していく予定である. 一方水性2相を利用したイオン液体の液膜含浸法は,予想したようにうまく担持することはできたが,生じた液膜の安定性に問題があった.この点は今後系の組み合わせをさらに詳細に検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい水性2相抽出によるバイオ産物の抽出に関しては,予定した2,3-ブタンジオールについては論文として投稿し,受理された.さらにコハク酸についても塩析および糖析のいずれにおいても興味ある結果が得られている.一方水性2相を利用したイオン液体の液膜含浸法は含浸はできたものの膜としての安定性に若干問題が残っている.以上を総合的に判断して上記の区分とした.
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今後の研究の推進方策 |
新しい水性2相抽出によるバイオ産物の抽出に関しては,予定した以上の成果が出ている.中性の2,3-ブタンジオールの抽出ばかりでなく,酸解離可能なコハク酸の塩析および糖析を利用した抽出に関してさらに詳しい検討を進めるとともに,双生イオン型のアミノ酸の分離についても検討を加える予定であり,ここで検討する新規な水性2相抽出の利点欠点を検証する予定である.また水性2相を利用したイオン液体の液膜含浸法は膜の安定化に向け,種々の操作条件を検討していく予定である.
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