研究課題
石油化学資源の枯渇が懸念されるいる今日,化成品原料は化石燃料から,再生可能資源由来のものに転換する必要がある.バイオマスなどの再生可能資源からの発酵法などを利用した物質生産は可能ではあるが,希薄で複雑な組成を持つ溶液からの目的物質の分離精製は困難であることが多く,時には製造コストの50%以上を占めるといわれる.そこで本研究では,従来法に比べ環境負荷の小さな新規の水性2相法を,バイオ産物の分離精製手段として提案するものである.本年はアミノ酸および有機酸の水性2相に取り組み以下の知見を得た.親水性有機溶媒を2-propanol,t-butanol, tetrahydrofuran(THF),塩を硫酸アンモニウムとした親水性有機溶媒/塩水性二相系によるアミノ酸の抽出実験を行い,アミノ酸の抽出機構を検討した.水溶性有機溶媒/硫酸アンモニウム系の特性を知るためにDNP-アミノ酸の分配実験を行った.ギブス移動自由エネルギーはいずれの溶媒でも負の値となり,その値は2-propanol<t-butanol<THFの順で大きくなった。これは溶媒の疎水性の順と同様になった.つまり親水性有機溶媒―塩系の水性2相系の疎水性は溶媒の疎水性に依存した.次にアミノ酸抽出に及ぼす塩濃度の効果を検討した.塩濃度が低くなると抽出率は増加し,有機相中の含水率も増加した.このことから水との共抽出作用が生じていることが推察できた.様々なアミノ酸の抽出率を検討した結果,疎水性が高いアミノ酸で高い抽出率が得られた.さらに抽出に及ぼすpHの効果を検討した.芳香族アミノ酸は高pH域,低pH域において高い抽出率を示し,上層で塩として存在しているものと推察された.またこのほか3-ヒドロキシプロピオン酸などの有機酸の水溶性有機溶媒系の塩析,糖析を利用した分離についても検討し,最適の抽出系を見出しつつある.
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