研究課題/領域番号 |
25420816
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
多田 豊 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80127456)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 超音波反応 / 反応・分離工学 / 化学工学 / 廃棄物処理 |
研究実績の概要 |
反応器底部から超音波照射し、上部液面に凹面反射板を置いて、超音波を局所集中させてより強い定在波を形成させ、反応器内音圧や反応速度を大きくすることができた。 強い定在波をつくるためには反射率の高い方が良く、反射率が大きい方からステンレス鋼、アルミニウム、ガラスを用いた。反応器内音圧は高い方からこの順であったが、KI溶液の酸化実験ではステンレス鋼とガラスの反応率が同程度に高く、アルミニウムがこれらより低かった。 超音波の照射でキャビテーションにより気泡が発生し、同時に水から水酸ラジカルが発生し、これが酸化反応に寄与する。定在波が強いほどキャビテーションは強くなり、気泡の発生は多くなる。反応中に気泡はガラス反射板には付着せず、他の2つには付着していた。ガラス表面は親水性であり、疎水性の気泡は付着しにくい。一方、金属表面は疎水性であり、気泡が付着しやすい。付着した気泡は固定端反射ではなく、一部自由端反射にさせ、反射板効果を小さくする。このことが反応率が反射率の順にならなかった理由だと考えられる。 反射板表面を親水性にするためにステンレス鋼への親水性膜の塗布や、表面のエタノールやアルカリ処理を行い、反応率を上げることができたが、使用する度にはがれて行ったり、表面親水性が低下し、気泡が付着して行った。また、気泡が付きにくいような反応器内流れや反応器構造にするために、反応器全体を傾けて気泡が上部反射板に向かいにくいようにしたり、底部に反射板を置き、上部液面から照射する実験を行ったが、それでもステンレス鋼やアルミニウムでは気泡が付着した。 ステンレス鋼やガラスの凹面反射板とステンレス鋼製反応器を用いて、難分解性標準物質であるTPPSの分解実験を行ったが、反応率は20%未満であった。 凹面反射板への気泡付着を少なくすれば、より反応率を上げることができる可能性があることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
凹面反射板には超音波定在波を強くしてキャビテーションを増大させる効果があり、密度の大きいステンレス鋼で反応器内音圧が高くなり、反応も進むが、同時に生成した気泡が反射板裏面に付着し、反射が弱くなることが分った。これは金属表面が疎水性であり、同じ疎水性である気泡が付着しやすいためである。ガラスの場合は表面が親水性であり、気泡は付着しにくく、ステンレス鋼より定在波は強くなく、反応率もステンレス鋼より低くなると予想されたが、両者は同程度であった。 すなわち、強い定在波を作るために、密度が大きくて、超音波反射率が大きい凹面反射板を用いたいが、気泡がより多く発生し、反射板表面が疎水性であると、気泡が反射板裏面に付着して定在波を弱くするという問題が生じている。 この問題を解決できれば凹面反射板により定在波を集中させ、反応器内音圧を高くして、難処理物質分解反応を促進させることができる。 これらのことから、密度が大きくて、親水性表面をもつ凹面反射板を試みる必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
密度が大きく、かつ親水性表面持つ材料として、鉛ガラス凹面反射板とステンレス表面にガラス被膜をつけたホーロー製凹面反射板を作成し、反射板表面の気泡付着をなくし、KI反応および難分解性標準物質であるTPPS分解反応の促進を試みる。 また、超音波は上部の凹面反射板での反射だけではなく、反応器側面や底面でも反射し、さらにこれらの組み合わせによる複数反射もある。したがって、反応器側面や底面の材質、表面状態も定在波の強さ、反応率に影響すると考えられる。これらの影響を明らかにし、反応率を大きくするために、鉛ガラス製やホーロー処理ステンレス鋼製の反応器を作成し実験する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
凹面反射板の使用により、超音波定在波をより強くすることができ、KI酸化反応率を上げることができたが、反射板裏面に気泡が付着し、反応器内音圧分布から期待される反応率を達成できなかった。反射板裏面の気泡付着を少なくすることができれば、反応率をさらに上げることができる。 研究当初に計画になかった密度が高く、反射率が高い材料の凹面反射板や反応器による実験を行う必要が生じたため、次年度に残額を使用し、研究を進める。
|
次年度使用額の使用計画 |
反応率をより大きくするために、当初の計画で考えていなかった密度の大きい鉛ガラスや、表面をガラス処理したホーローステンレス鋼による凹面反射板や反応器で実験を行う予定であり、それらは特殊制作であるため、その費用に充てる。 超音波凹面反射板の材質、焦点距離、反応器材質、反応器形状等の、より効果的な反応器構造を明らかにするため、さらに工夫した反射板や反応器の制作に残額を使用する。
|