研究課題/領域番号 |
25420818
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松根 英樹 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10380586)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 均一系触媒 / シリカ / 担体 / 中空構造体 / 酵素 / 金属錯体触媒 / 固定化 |
研究概要 |
金属錯体触媒や酵素等の均一系触媒は工学的には、回収や繰り返し利用時の利便性を向上する目的で担体表面に固定して用いることが多い。しかし、担体へ固定化すると均一系触媒が本来有する動的特性が失われるため、活性や反応選択性が著しく減少する。そこで本研究では、中空構造体を担体に用い、担体表面への固定化ではなく、空孔の中に閉じ込めて触媒と複合化させることを提案し、進めている。その結果、本来の動的特性を維持しつつ、簡便に回収できる系が構築できると考える。触媒として機能させるためには、中空構造を形成する物質は細孔構造である必要があり、その微細構造を調整して、閉じ込めた触媒を漏れ出さないが、触媒と反応する反応物は外部から侵入できるように構造制御することが重要である。 研究初年度となる本年度は、触媒として金属錯体触媒を中心に担体への内包法を試みた。多孔性の構造体であるシリカ(SiO2)の中空構造体に内包させる方法を確立することを検討とした。金属錯体触媒と有機分子でできた球状の分子集合体を形成する方法を見出し、さらにその周囲を均一な厚みのシリカ膜で被覆するための適切な条件を探索した。その結果、シリカを調製する原料に、シランアルコキシドとシランカップリング剤を混合して用いると細孔構造を制御することができ、金属錯体触媒を中空内に完全に閉じ込めることに成功した。適切な混合比の時には、触媒が全く漏れ出さず、有意な触媒活性を示すことがわかった。膜厚に応じて触媒活性も変化するため膜の細孔を通じて反応物が内部に侵入して触媒と反応していることを示している。以上のように、当初の目的である、中空構造体に触媒を閉じ込めながらも触媒活性が発現する新しい材料を調製することができた。 来年度は、上記の結果を受けて、酵素に着目し、酵素を失活させずに中空構造体に閉じ込める方法を確立することを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中空に金属錯体触媒を閉じ込めつつ、触媒活性を発現する新しい構造体を調製する方法論について検討し、適切な条件を見出すことができた。触媒の完全な閉じ込めと触媒活性発現の両立が可能かどうか当初懸念されたが、中空構造体の膜壁を形成するシリカの細孔構造の制御方法を見出し、閉じ込めた触媒が全く漏れ出さず、閉じ込めた触媒が有意な活性を示すための適切な条件を見出すことができた。これは、当初、交付申請時に記載した今年度の目標であり、本研究課題を達成するための大きな成果である。さらに、次の大きな目標である酵素の内包法に対する有意な知見となると考えられる。以上から研究が順調に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次の大きな課題である生体触媒や酵素等を中空構造体に閉じ込めることを検討する。これによって、高価で貴重な酵素の繰り返し利用ができるようになるため、工学的に非常に有意義である。ただし、酵素はpHや温度で容易に変性して、失活し易く、それを防ぎつつシリカ膜を形成させる方法の探索が大きな課題である。達成までの各工程における条件を最適化しながら、1つずつ課題を解決しながら研究を進める必要がある。異常で得られた知見を元に本方法論を多様な生体触媒や酵素に適用し反応工学の発展に寄与していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究が順調に進捗し、当初の目標を達成することができた。当初見込んでいた試験回数よりも少なく済み、消耗品の消費が少なく、次年度使用額が生じた。次年度には反応のスケールアップ、ならびに酵素など高価な生体関連物質を用いた試験を計画しており、それに伴う試薬および消耗品の増加が見込まれる。今年度に生じた次年度使用額と来年度の交付予定額を合算して用いて研究を遂行し、次年度目標を達成する。 酵素などの生体関連の高価な試薬を大量に使用することを計画しているため、生じた当該助成金は翌年度にの助成金とともに使用する必要がある。今年度の研究の進捗を受けて、来年度には、触媒の種類を増やし、多様な均一系触媒に本方法論を適用していく。そのため、試験回数の増大が見込まれ、次年度使用額と翌年度に交付が予定されている助成金を共に使用して研究を進め、目標を達成する。研究の進捗状況に応じて、ガラス器具や反応器などの設備消耗品を新たに購入する。
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