本研究課題は,申請者が見出したユニークで簡便な手法によりカプセル構造体を調製し,種々の新しい応用展開を提案していく.具体的には,射出法により調製した球状の低分子集合体ナノ粒子をシリカ被膜で閉じ込める新規手法でナノカプセルを得え,次に,得られたナノカプセル内の機能性分子を利用して化学反応の触媒や医療の治療薬剤として利用する方法を提案していくことを目的とする. 平成26年度と平成27年度は,本調製法を応用して,触媒活性や選択性が高いため工学的に重要な均一系触媒を中空のシリカ構造体の内部に閉じ込める方法を確立した.均一系触媒は,通常,回収や繰り返し利用するために化学修飾により担体へ固定化されているが,触媒を得るまでの工程が煩雑になるとともに,活性や選択性が低下するという問題がある.しかし,本研究が提案する物理的な内包法を用いると,触媒を化学的に固定化せずにナノサイズの中空に閉じ込めることができるので,触媒劣化を回避しつつ,繰り返し利用など均一系触媒の利便性が向上する.そのため工業プロセスの効率化ならびに新しいプロセスの開拓が期待される. 平成28年度は,本調製法を応用して,生体関連の親水性物質のカプセル化を行った.それまで疎水性のものに限られていたカプセル化を,方法の改変により親水性分子で行うことに成功した.球状ナノカプセル構築の芯物質の探索のために親水性分子のスクリーニングを行い,その結果,適した親水性分子を見出し,カプセル構造体を得ることに成功した.生体関連の高機能性分子を内包させつつ約十ナノメートルのシリカ膜で覆いカプセルを得る方法を見出した.このユニークな構造体を単一容器内で簡便に調製できるという本調製法の特性を活かすことでバイオプロセスならびに医学的治療法などに応用できると考えており,それらの分野での開発やプロセス効率が飛躍的に改善されると期待される.
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