多孔性配位高分子(PCP)および金属-有機構造体(MOF)は、従来のゼオライト・メソ孔シリカ・活性炭等の吸着や膜分離材料と比較して分子デザインが極めて容易であり、優れた目的物質の吸着・分離特性、電気化学的性質が報告されている。しかしながら、金属イオンおよび有機配位子から構成されるPCP/MOFの細孔内の構造や疎水/親水性は極めて複雑であり、汎用溶媒を用いた含浸による細孔中へのナノ粒子の分散・固定化は難しい。さらに汎用溶媒を用いた液相プロセスでは、溶媒除去時における界面張力による構造崩壊や低浸透性により、微細構造が制御されたPCP/MOF-貴金属ナノ粒子複合体の調製は極めて困難であった。 そこで本研究課題では、超臨界CO2と極性溶媒のハイブリッド混合流体が、超臨界CO2単独に比べ目的物質の溶解特性を維持したまま、他の汎用溶媒に比べ極めて大きな浸透力、極めて小さな界面張力(もしくはゼロ)といった特異な性質を有することに着目し、超臨界流体法がPCP/MOFの高機能化に極めて有効であることを見出した。これらの成果では、超臨界流体を用いた乾燥法により、PCP/MOFの比表面積が劇的に増加し、細孔構造が活性化されていることを示した。超臨界流体の含浸法により、PCP/MOF細孔中への生理活性物質であるイブプロフェンの含有量を30wt.%程度まで向上できることを示した。さらに、超臨界流体を用いた含浸法により、従来の汎用溶媒では困難とされてきたシングルナノレベルの微細な細孔内に化学物質を注入できることを示した。本手法では、PtやPdなどの貴金属ナノ粒子をPCP/MOF細孔内部に分散した状態で固定化が可能であり、高い活性を有する触媒の調製に成功した。
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