研究課題/領域番号 |
25420825
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
海老谷 幸喜 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (50242269)
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研究分担者 |
西村 俊 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (20610067)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオマス転換 / 固体触媒 / フルフラール / ヘキサンジオール / ギ酸 |
研究概要 |
バイオマス由来物質を有用な化成品材料に変換する技術は、新たな資源開発・資源の多様化という観点で意義深い。ハイドロタルサイトを固体塩基触媒に、イオン交換樹脂アンバーリストを固体酸触媒として用いて、バイオマス由来の糖類をフルフラール類へと変換する事を目的として研究を行っている。3糖類化合物であるラフィノースは、加水分解反応、異性化反応、脱水反応を経てフルフラール類へと変換できる事を見いだした。また、糖類から、レブリン酸、琥珀酸を効率的に合成する固体触媒反応系を見いだした。特に、様々な糖類からギ酸を合成する過酸化水素ー固体触媒系を発見した。ギ酸は、室温で液体であり、安全な事から、高圧水素に替わる新たな水素源として注目されており、その合成方法の確立が急務であった。また、ギ酸を水素源とするフルフラールからの工業的に重要な1,6-ヘキサンジオールおよびγーバレロラクトンの還元的生成経路も見いだしている。その際、担持金属触媒を用いているが、担体の酸性が重要な役割を果たす事も見いだしている。バイオマス由来の糖類からギ酸を作り、そのギ酸を水素源とする一連の流れを確立すべく、新たな固体触媒系を探索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖類の化成品原料への効率的変換に向けた固体触媒系を開発しており、以下の様に一定の成果は収めていると判断できる。(1) 固体酸・塩基触媒を用いてペントース類を異性化・脱水・クネベナゲル縮合反応を経由してフルフラール誘導体をワンポットで合成できた。 (2) 木質系バイオマスの主成分であるグルコースおよびフルクトースを原料にして、ギ酸を酸と還元剤に用いγーバレロラクトンをワンポットで合成できる金属酸化物担持金ナノクラスターを開発できた。(3)ヒドロキシメチルフルフラールを原料にし、担持パラジウム触媒用いて、ギ酸を還元剤として1,6-ヘキサンジオールを合成できる事を見いだした。(4)3糖類であるラフィノースをフルフラール類へとワンポットで変換する固体酸・塩基触媒系を見いだした。(5) 水中でのグルコースからフルクトースへの異性化反応に有効な新規固体塩基触媒を見いだした。 これらの研究の途中で見つかったギ酸合成については、合成の効率化やギ酸の還元剤としての利用に向けた触媒系の開発を更に推し進めていくため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、(1) ギ酸を水素源とする還元反応として、(1-1) ニトロベンゼン類の還元、(1-2) ニトリル基の還元によるアニリン類合成へと、研究を展開する。(1-3) それに向けて新しい担持金属触媒を開発する。(1-1) では、ニトロ基と他の官能基を併せ持つ基質を用いて化学選択性を検討する。(2) 糖類から合成されるフルフラール類の化成品原料への転換反応も引き続き行う。(3) バイオマス由来資源からギ酸を合成する新規な固体触媒系を開発する。ここでは、水熱合成条件で調製した酸化銅種を塩基性固体表面に固定化し、金属酸化物と塩基固体の機能を協奏させ、糖類からのギ酸合成を目指す。酸化剤としてはクリーンな過酸化水素水を用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品の購入等で、予算の効率的な使用ができたため、差額が未使用額となったため。 反応ガス、試薬等、消耗品の購入に使用する予定である。
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