研究課題/領域番号 |
25420832
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中島田 豊 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (10281164)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エタノール / 酢酸 / ホモ酢酸菌 / プロテオーム / バイオガス / 合成ガス |
研究実績の概要 |
本研究では、好熱性偏性嫌気性微生物 M. thermoacetica ATCC 39073 株を宿主とする、1)エタノールをモデル生産物とした高生産変異株の分子育種技術の開発、2)遺伝子導入・発現法の高度化、そして 3)H2-CO2 を基質とした培養技術の検討課題を解決してゆくことにより、バイオガスからの有用 物質生産プラットフォームの有効性を明らかにする。 昨年度、M. thermoaceticaの酢酸生成経路をほぼ完全に破壊するとともに、乳酸脱水素酵素遺伝子(T-ldh)を導入することにより、本来のホモ酢酸発酵をホモ乳酸醗酵へ転換することに成功した。そこで、本年度は、同様の手法により、エタノール生産株の作成を行った。M. thermoacetica ΔpyrF 破壊株にアルコール生産遺伝子をグルタルアルデヒド3リン酸脱水素酵素遺伝プロモーター制御下で導入しただけでは、エネノール生産は見られなかった。しかし、同時に酢酸生成遺伝子を破壊することにより、酢酸生成は減少し著量のエタノールが生産された。このことから、酢酸生成遺伝子の破壊がM. thermoaceticaによるエタノール生産に有効であることが示された。今後、本エタノール生産変異株の代謝解析を行う予定である。 また、M. thermoaceticaの遺伝子導入・発現を高度化するために、糖およびH2-CO2で培養した菌体抽出物のプロテオーム、MS分析により、それぞれの条件で高度発現しているタンパク質を検出、同定することができた。今後、高発現タンパク質のプロモーター強度を調べ、高発現系の開発を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、M. thermoaceticaに、アルコール生産遺伝子を導入すると同時に酢酸生成遺伝子を破壊することにより、糖を基質として酢酸生成は減少し著量のエタノールが生産することに成功した。ただ、予想通り、H2-CO2では増殖が見られないことから、2段階培養法を検討しており生産性改善については概ね順調に進んでいる。一方、代謝フラックス解析が遅れている。これは、解析費用が高価であるため、エタノール生産株と野生株を同時に解析を行うことで研究費を効果的に用いるためである。種々の有用物質生産変異株の製作については、耐熱性ブタノール生産遺伝子のクローニングを行っており、遺伝子導入に向けて準備を行っており、概ね順調に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画と比較して、代謝解析は遅れてはいるものの、他は概ね順調に進んでおり、基本的には計画書通り研究を推進したい。 まず、本年度育種したエタノール生産菌について、培養特性、代謝機能を詳細に解析し、最適な培養法を検討するとともに、バイオリアクターを用いたエタノール生産試験に挑戦し、高速エタノール生産を実現したい。さらに、開発した遺伝子組換え技術を用いて関連遺伝子を導入することでエタノール以外の代謝産物についても製造可能であることを示したい。
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