研究課題
本研究では、好熱性偏性嫌気性微生物 M. thermoaceticaを宿主として、エタノールをモデル生産物とした高生産変異株の分子育種技術の開発、遺伝子導入・発現法の高度化、そして H2-CO2 を基質とした培養技術の検討課題を解決してゆくことにより、バイオガス(H2, CO, CO2)からの有用物質生産プラットフォームの有効性を明らかにすることを目的とした。研究開始時、M. thermoaceticaへの遺伝子導入に必要な選択マーカー遺伝子はpyrFのみであったが、新たに、耐熱性カナマイシン耐性遺伝子を適切なプロモーターに連結することで、新規選択マーカーとして利用できることを示した。また、定量PCR法による主要一次代謝経路酵素遺伝子の転写解析、およびプロテオームによる発現解析によりプロモーター活性を網羅的に解析し、有望なプロモーターを耐熱性β-ガラクトシダーゼと連結、翻訳活性をカタログ化した。さらに、本プラットフォームの有効性を示すために、M. thermoaceticaへのエタノール生産遺伝子を導入した変異株を作製した。M. thermoaceticaに、グルタルアルデヒド3リン酸脱水素酵素遺伝プロモーター制御下でアルコール生産遺伝子を導入しただけでは、糖質からのエタノール生産は見られなかったが、酢酸生成遺伝子を同時に破壊することにより、酢酸生成はほぼなくなり、著量のエタノールが生産された。しかし、本変異株のH2-CO2資化能は消失した。そこで代謝解析によりH2-CO2代謝経路の原因酵素を推定し、ボトルネックの解消を目指している。また、本変異株を用いたバイオマスモデル基質からの好熱エタノール生産に成功した。本変異株は糖を同時に添加することでH2-CO2資化能を回復したことから、糖と合成ガスの共発酵によるエタノール生産が期待できる。
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Journal of Bioscience and Bioengineering
巻: 121 ページ: 268-273
10.1016/j.jbiosc.2015.07.003
http://home.hiroshima-u.ac.jp/nyutaka/Lab_Biotechnol/Biogas_Conversion.html