近年の先端科学産業では多様なレアメタルが利用されており、産業のビタミン剤と呼ばれるほど、製品等製造において、必須の金属材料となっている。一方、レアメタルはその名の示す通り、地殻中の存在量が比較的少なく、ほとんどの元素がベースメタルの鉱石に微量に含まれた状態で存在していることから、採掘や精錬、分離精製が技術的に困難であり、資源としての枯渇が懸念されている。さらに、ほとんどのレアメタルは特定の国に偏在しており、資源の自国内への囲い込みの動きも出てきている。世界でも有数の各種レアメタル消費大国である我が国において、その安定供給に向けた対策が必要とされている。本研究では、すでに金属気化機能(バイオボラタリゼーション)を有する微生物を対象に、レアメタルを気化するメカニズムを培養工学的観点と、遺伝子工学的観点から検討し、最終的には実用的なレアメタル回収システムの開発を行う。 本研究期間内では、レアメタルの1種であるセレンの気化能に関与する遺伝子の特定や、気化セレンの生合成に関する重要な因子の同定や最適化条件の決定を試みる。これら一連の研究を通じて、排水や廃棄物からのレアメタルのリサイクルを可能とし、他のメタルに応用するとともに、先端的手法の一つの指針となることを目指すものである。 先行研究のセレン酸・亜セレン酸の還元最適化をモデル系と考え、Pseudomonas stutzeri NT-I株による元素態セレンからメチル化セレンに還元する最適化条件を求める。そして、メチル化セレン合成に関与する因子の特定を行う。またセレン気化に関与する遺伝子の取得と機能解析を行う。以上のことをとりまとめ、回収向上のための一助とする。
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