研究課題
前年度までの検討で、リン脂質とコレステロールを主成分とする巨大分子集合体が、その作製条件によって多形の液晶相構造をとることが明らかとなった。この相構造を詳細に調べることで、分子集合体内での脂質分子の配列状態が明らかになり、これを制御できれば多様な特性を引き出せると考え、平成27年度は、小角/広角X線散乱測定、偏光顕微鏡測定による相挙動の評価を中心とした検討を行った。リン脂質とコレステロールに加えて、重量割合として5%に満たない微量の第3成分を添加することで、キュービック相、ヘキサゴナル相、ラメラ相など、分子集合体の相構造を制御でき、球状やフィルム状といった異なる形態の分子集合体が得られることを明らかにした。さらに、水相のpHによっても分子集合体の相構造および巨視的な形状が異なることを示した。以下に全年度を通じた本研究の成果を要約する。1. リン脂質とコレステロールに少量のモノアルキル化合物を添加した脂質混合物を用いて、大きさがミリメートル以上に達するこれまでにない分子集合体の作製方法を確立した。2. 本巨大分子集合体は、外部水相の電解質濃度や温度に応答して青色(波長450 nm程度)から淡赤色(波長650 nm程度)の可視光線を選択的に反射することを明らかにし、新規フォトニック材料への利用が期待できる全く新しい素材であることを示した。3. 小角/広角X線散乱、各種顕微鏡観察および分光学的な種々の測定により、本巨大分子集合体が多形の液晶相構造を示すことを明らかにし、その相構造は集合体を構成する脂質組成や温度、pHといった外部条件によって変化することを明らかにした。これまでにリン脂質を中心とする生体脂質成分を利用したフォトニック材料に関する研究は見当たらず、生体脂質成分の生体適合性や構造多様性を活かした新ジャンルの材料へと展開できる可能性を示す有意義な成果が得られた。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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