研究課題/領域番号 |
25420843
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
市原 英明 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (70369114)
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研究分担者 |
松本 陽子 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (00133562)
上岡 龍一 崇城大学, 生物生命学部, 客員研究員 (70099076)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 癌 / シグナル伝達 / ナノメディシン / in vivo / 転移 |
研究概要 |
(1)トラスツズマブ(TTZ)は、ヒト上皮成長因子レセプタ2(HER2)を過剰発現している転移性乳がん患者に対して用いられる分子標的薬である。ヒト乳がん(MDA-MB-453)細胞の異種移植モデルマウスを用いて、TTZで活性化したリンパ球(TTZ-LAK)の治療効果をin vivoで検討し、以下のような興味深い知見が得られた。①MDA-MB-453細胞で皮下移植した乳がんモデルマウスに対して、TTZ-LAK細胞を静脈投与したところ、腫瘍容積の顕著な抑制が確認された。②乳がんモデルマウスの腫瘍内へのTTZ-LAK細胞の遊走が、CD-3免疫染色による組織学的解析により明らかになった。③TTZ-LAK細胞で治療した乳がんモデルマウスの腫瘍切片をTUNEL法により解析したところ、アポトーシス誘導が確認された。これらの結果から、ヒト乳がんモデルマウスに対するアポトーシス誘導によるTTZ-LAK細胞の治療効果がin vivoにおいて明らかになった。(Biol. Pharm. Bull., 36, 861(2013)) (2)DMPC、PEG系界面活性剤(C12(EO)21)およびカチオン性脂質(2C14ECl)からなるハイブリッドリポソーム(HL)のヒト大腸がん(HCT116)の肝転移モデルマウスに対する治療効果を検討し、以下に示す新しい知見が得られた。①カチオン脂質含有HLの静注により、大腸がん肝転移モデルマウスに対する治療効果が得られた。②組織学的解析により、カチオン脂質含有HLで治療した肝転移モデルマウスの肝臓内の腫瘍部分で、アポトーシス誘導が確認された。(Biol. Pharm. Bull., 3, 498 (2014))
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイブリッドリポソーム(HL)を用いたがん治療効果に関し、(1)トラスツズマブ(TTZ)は、ヒト上皮成長因子レセプタ2(HER2)を過剰発現している転移性乳がん患者に対して用いられる分子標的薬である。ヒト乳がん(MDA-MB-453)細胞の異種移植モデルマウスを用いて、TTZで活性化したリンパ球(TTZ-LAK)の治療効果をin vivoで検討し、以下のような興味深い知見が得られた。①MDA-MB-453細胞で皮下移植した乳がんモデルマウスに対して、TTZ-LAK細胞を静脈投与したところ、腫瘍容積の顕著な抑制が確認された。②乳がんモデルマウスの腫瘍内へのTTZ-LAK細胞の遊走が、CD-3免疫染色による組織学的解析により明らかになった。③TTZ-LAK細胞で治療した乳がんモデルマウスの腫瘍切片をTUNEL法により解析したところ、アポトーシス誘導が確認された。これらの結果から、ヒト乳がんモデルマウスに対するアポトーシス誘導によるTTZ-LAK細胞の治療効果がin vivoにおいて明らかになった。(Biol. Pharm. Bull., 36, 861(2013)) (2)DMPC、PEG系界面活性剤(C12(EO)21)およびカチオン性脂質(2C14ECl)からなるハイブリッドリポソーム(HL)のヒト大腸がん(HCT116)の肝転移モデルマウスに対する治療効果を検討し、以下に示す新しい知見が得られた。①カチオン脂質含有HLの静注により、大腸がん肝転移モデルマウスに対する治療効果が得られた。②組織学的解析により、カチオン脂質含有HLで治療した肝転移モデルマウスの肝臓内の腫瘍部分で、アポトーシス誘導が確認された。(Biol. Pharm. Bull., 3, 498 (2014)) 以上のように、計画通りに研究が進行しており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、HLによるがん治療効果に関し、(1)in vitroにおいて、スクラッチアッセイおよびトランスウェルチャンバーを用いたmicroporeフィルターアッセイにより浸潤・転移抑制効果を検討していく予定である。(2)がん転移モデルマウスを用いて、HLをモデルマウスの静脈内に投与して腫瘍体積および重量を測定し、治療効果を検討する予定である。(3)in vitroにおいて、タンパク分解酵素MT1-MMPおよび遊離型のMMPs (-2, -9)の解析を行い、転移・浸潤抑制メカニズムを検討する。(4)in vivoでの固形腫瘍の免疫染色による抗転移メカニズム解析を検討する。(5) 担がんマウスを用いた体内動態試験を検討する。 このように、in vitroでのがん細胞に対するHLのみによる抗転移効果を明らかにし、そのメカニズムを解明する。また、in vivoでの転移モデルマウスに対する治療効果を明らかにする。さらに前臨床試験によりHLの安全性を確認し、HLの抗転移効果によるがん治療を目指す。
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