研究実績の概要 |
脂質分子(DMPC)およびミセル分子(C12(EO)23)から成るハイブリッドリポソーム(HL)の腫瘍に対する血管新生抑制効果を検討するために、in vitroにおいては、HLの血管新生抑制メカニズムについて正常ヒト血管内皮細胞(HUVEC)を用いて検討した。in vivoにおいては、ヒト乳がん(MDA-MB-453)細胞皮下移植モデルマウスに対する治療実験を行った。HLは、HUVECの生存に影響を与えない濃度で、管腔形成を抑制することが明らかとなった。MDA-MB-453細胞皮下移植モデルマウスにおいて、HL治療群ではControl群と比べて有意に腫瘍重量が小さかった。CD34免疫染色により、腫瘍表面、腫瘍内部の両方で、CD34陽性領域の減少が確認された。以上の結果から、MDA-MB-453細胞皮下移植モデルマウスに対して、HL-25は、抗腫瘍効果を持ち、血管新生を抑制することが示唆された(J. Carcinogene. Mutagene., 6, 1000207 (2015))。 HLによる肺がん(A549)細胞への制がんメカニズムに関して、セラミドとの関連及び転移浸潤抑制効果について検討した。HLのA549細胞に対するG0/G1 arrestおよびアポトーシス誘導による増殖抑制効果が明らかとなった。HL濃度依存的にセラミド量が増加し、HLが誘導するG0/G1 arrestおよびアポトーシスには、セラミドの関与が明らかとなった。中性スフィンゴミエリナーゼ阻害剤で処理により増殖抑制効果が阻害され、HLによるセラミド産生に中性スフィンゴミエリナーゼが関与することが示された。HLで処理した細胞では、スフィンゴミエリン量が減少し、HLが誘導するセラミドは細胞内のスフィンゴミエリンにより生成される可能性が示された。HLによりMT1-MMP(MMP-14)量が減少しており、遊走・浸潤抑制効果へのMMPの関与が明らかとなった(J. Carcinogene. Mutagene., 6, 1000230 (2015))。
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