研究課題/領域番号 |
25420845
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
羽生 義郎 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (20357792)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 抗体 |
研究実績の概要 |
本研究では、CpGオリゴヌクレオチドによる抗原特異的抗体産生細胞の活性化のメカニズムを目指し、効率的な抗体作製技術の確立を行う。より良いモノクローナル抗体、すなわち抗原特異性が高くかつ抗原親和性が高い抗体を樹立するには、抗体抗体産生細胞を広く活性化するのみではなく、抗原特異的に抗体産生細胞を活性化することが重要である。 平成26年は、この抗体産生細胞の活性化のメカニズムの解明を行った。Mycobacterium tuberculosis中のタンパク質であるAg85Bの中から、25残基のペプチドを選抜し、合成した。免疫時にこのペプチドを抗原と共に与えることにより、抗原特異的に抗体抗体産生細胞を活性化させることが可能であることを発見した。活性化が確認された抗体のサブクラスは、主にIgG1であった。この時の免疫系細胞の遺伝子発現を調べる事により、ヘルパーT細胞の分化がTh2と誘導され、抗体産生細胞が活性化されていることがわかった。また、インビボ免疫法においてもインビトロ免疫法においても、本ペプチドを抗原と共に投与することにより、抗原特異的に抗体抗体産生細胞の活性化が確認された。インビトロ免疫法は、動物を直接使わない、ごく微量の抗原で免疫が可能である、免疫期間が短い等の大きな利点がありながら、有効な免疫活性化の方法がなく誘導される抗体は親和性・特異性の低いIgMが主であったが、本ペプチドをインビトロ免疫に利用することにより、より高機能の抗体誘導が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、CpGオリゴヌクレオチドによる抗原特異的抗体産生細胞の活性化のメカニズムを目指し、効率的な抗体作製技術の樹立を行うことを目指している。良いモノクローナル抗体、すなわち特異性および親和性が高い抗体を樹立するには、抗体抗体産生細胞を広く活性化するのみではなく、抗原特異的に抗体産生細胞を活性化することが重要である。抗原特異的抗体産生細胞の活性化のアッセイが確立し、活性化因子の同定に成功しており、本研究が概ね順調に進んでいると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、抗原特異的抗体産生細胞の活性化のアッセイが確立することができ、、活性化因子の同定に成功することができた。またリアルタイムPCR法による遺伝子発現を用いた、B細胞・T細胞の活性化評価も可能となった。今後は、この評価方法を用いてCpGオリゴヌクレオチドによる抗原特異的抗体産生細胞の活性化のメカニズムの解明を行っていく予定である。またCpGオリゴヌクレオチドによる抗原特異的抗体産生細胞の活性化には、本研究で同定した抗原特異的抗体産生細胞の活性化をもたらすペプチドとの相乗効果も見られるので、合わせてそのメカニズムの解明を行っていくことが重要であると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、CpGオリグヌクレオチドによる抗体産生細胞の活性化メカニズムの解明において、実際にCpGオリゴヌクレオチド刺激による抗体産生細胞の変化、すなわちサイトカインの分泌量変化を調べる前に、抗原特異的抗体産生細胞を活性化の定量的評価を行うことが重要であるので、アッセイやリアルタイムPCR法による遺伝子発現の定量化等を行った。このため、当初予定していたCpGオリゴヌクレオチドの設計・購入やサイトカイン測定試薬を購入する必要がなくなり、平成26年度の使用額が減少した。このため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度では、平成26年度に同定した抗原特異的抗体産生細胞に対する活性化能を持つペプチドとCpGオリゴヌクレオチドの作用機序の違い、その抗原特異的抗体産生細胞活性化の相乗効果の解明を行っていく。より強い抗原特異的抗体産生細胞活性化能を持つペプチド・CpGオリゴヌクレオチドの設計・作製を行い、より高い親和性・特異性を持つ抗体の樹立技術の確立を目指す。次年度使用額は、その研究に使用予定である。
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