研究課題/領域番号 |
25420849
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
石井 一洋 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20251754)
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研究分担者 |
片岡 秀文 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10548241)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 推進 / エンジン / デトネーション / 衝撃波 |
研究実績の概要 |
回転デトネーションエンジン(RDE)は、環状燃焼器の周方向にデトネーションを回転・定在させるものであるが、安定な回転デトネーションの成立条件ならびに燃焼器内で複数の回転伝播モードが存在する要因は明らかになっていない。本研究では、燃料・酸化剤供給圧力、点火・起動方法が、回転デトネーションの伝播挙動に及ぼす影響を実験的に調べ、安定な回転デトネーション成立条件を解明することを目的としている。 平成26年度は、前年度に製作した内部混合型RDE環状燃焼器の連続運転用の燃料・酸化剤供給システムを構築し、燃焼試験を行った。RDE環状燃焼器は、燃料噴射孔径1 mmで、72個の噴射孔から燃料を導き、燃焼器外周方向から導入された酸化剤と衝突・混合させる方式となっている。RDEでは燃料および酸化剤の供給流量が大きく、ガスボンベに取り付ける通常の圧力調整器では供給が追いつかない。本研究では、燃料および酸化剤をいったん内容積50リットル程度のタンクに所定の圧力で充填し、そこから電磁弁を介して環状燃焼器に供給する形式を採用した。また、点火・起動方法は前年度の研究を受けて燃焼室内壁における火花放電を用いた。その結果、(1)火花放電による点火・燃焼に成功し、本燃焼器では良好に燃料と酸化剤の混合が促進されていること、(2)圧力波形から、点火時にデトネーションが起動していること、(3)ノズルについてストレートノズルとスパイクノズルの二種類を用意し実験を行ったところ、後者の方が火炎長が短く、より安定すること、がわかった。しかしながら、使用した圧力変換器は燃焼器内壁にフラッシュサーフェスの状態で取り付けているため、過大な熱流束により数10 ms程度しか圧力計測ができず、定常状態における回転デトネーションの伝播速度の計測までは至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、短時間に大量の可燃性混合気を環状燃焼器に供給するために、とくにミスファイヤ、未燃状態でのガス排出に留意した。そのため、点火時には2 ms間隔で約50回程度の火花放電を起こし、確実な点火を図った。これによる点火の成功とデトネーション起動は確認できたものの、火花放電開始から100 msの期間は回転デトネーションが定常伝播しているのか、火花放電により燃焼が継続しているのかの区別をつけるのが困難であった。また、研究成果の概要に述べたように、圧力変換器が実験の中後半で使用不能となり、デトネーションの伝播確認が困難となった。さらに燃料および酸化剤の充填圧力は最大0.7 MPa程度であり、燃焼期間後半は供給流量が不足した可能性がある。 上記課題はあるものの、懸念点であった燃料と酸化剤の混合は良好に行われており、内部混合型により逆火防止にも成功した。以上より、本研究は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
RDEでは、燃料・酸化剤の流量ならびに当量比によってデトネーション波面が複数存在することが知られている。また条件によっては、回転デトネーションの伝播速度がCJ速度の半分程度になる。しかしながら、伝播モードと伝播速度の関係性や、安定伝播の条件も一般化されていない。 本研究では、安定な回転デトネーションの成立条件の解明を主眼とし、燃料・酸化剤供給圧力、当量比がデトネーションの伝播挙動に及ぼす影響を系統的に調べることを行う。平成26年度までにRDE連続燃焼試験の実施体制は整っているが、課題としては、(1)デトネーション起動の迅速化、(2)燃料・酸化剤の供給流量アップが挙げられる。前者は、イニシエータ管を燃焼器に接続し、イニシエータ管内で生じたデトネーションを燃焼室に導入することで対応する。後者は、現在使用している圧力調整器を高圧型に変更し、燃料および酸化剤のタンクの充填圧力を上昇させることで対応する。なお、平成26年度の燃焼試験にて、スパイクノズルの使用により火炎長短縮が図られた。このため、高速度カメラを燃焼器下流正面に設置できることがわかり、髙熱流束により圧力変換器が使用不能となった場合にも、回転デトネーション伝播速度計測が可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、燃料および酸化剤の供給圧力を変化させて回転デトネーションの伝播挙動を調べる予定であったが、過大な熱流束による圧力変換器の使用不能、長大な火炎による高速度カメラ設置の困難さにより、回転デトネーションの挙動を特定するまでには至らなかった。そのため、回転デトネーションの各伝播モードに対して、ZNDモデルに基づく一次元解析は実施しておらず、実験結果に基づく解析対象の検討を共同研究者と行ってはいない。このような理由から、研究打ち合わせ旅費に相当する費用分として次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、平成26年度に実施ができなかったZNDモデルに基づく一次元解析に関して、実験結果に基づき解析方法を検討する打ち合わせ旅費に使用することに充当することとする。
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