X線天文衛星や赤外天文衛星では極低温に冷却された高感度検出器を開口面から観測対象に向けて観測が行われる。この時、開口部から入射される熱輻射が観測機器への熱負荷となり、冷却能力が限定される衛星では大きな問題となる。このため、開口面に取り付ける輻射シールド並びにバッフルの最適配置を通じて侵入熱負荷の低減法の研究を行っている. 本課題の最終年度である平成28年度の研究実績の概要を次に示す。 (1) 本課題研究である侵入熱負荷の低減法の研究成果が飛騨市神岡町に建設された低温重力波望遠鏡(KAGRA)の低温設備の設計に応用され、その冷却試験が飛騨市神岡町のKAGRAトンネル内で行われた。この試験結果から、径270mmの常温開口部から干渉計の試験質量(鏡)を懸架する輻射シールド内への熱侵入が従来に比べて1/100以下になることが実証された。これは、約20Kまで冷却された干渉計の試験質量(鏡)への熱侵入が低減され、結果として熱に由来する雑音を減少させることを意味する。これより、本研究成果が低温重力波望遠鏡(KAGRA)の感度向上に大きく貢献することができた。 (2) 平成27年度に引き続き液体窒素冷却ヒートパイプを用いたパイプ・バッフルから熱の除熱法の実証実験を海外の研究者の協力を得て行った。この実験データの解析から、ヒートパイプ過加熱後に発生するドライアップの検証を本実験により可能であることが理解され、従来検証が難しいとされていたドライアップ実験を継続して行うこととした。さらにのヒートパイプの熱輸送能力について断面形状等の依存性についての実験を行い、その実験結果の解析を継続中である。
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