研究課題/領域番号 |
25420860
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柴田 和也 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30462873)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 粒子法 / 自由表面流れ / 圧力振動 / 計算コスト削減 |
研究実績の概要 |
浮体式洋上発電装置に加わる波浪荷重を、粒子法を用いて数値解析する際に圧力の振動が問題となる。標準的な粒子法で求めた流体の圧力値には空間的・時間的に大きく振動する成分が含まれるため、圧力値から現象を理解しづらいという問題があった。また流体の静止状態を表すことが難しいという問題があった。本研究では先行研究と異なる考え方に基づく簡便な方法によりMPS法の圧力振動を抑制するとともに壁粒子数を削減することで計算コストを低減できる方法を開発した。 具体的な方法として、圧力ポアソン方程式の離散化式に補正項を追加し、自由表面上に仮想的な粒子があるとしてその影響を加えた。またポアソン方程式のソース項を改良した。これにより流体内部の圧力の振動成分を低減させた。また、グラディエントモデルを変更し、自由表面付近においても粒子間の距離が一定に近くなるように改良した。また、粒子1層分の壁面厚さで流体解析を可能にするために、各壁面粒子の外側に仮想的なダミー粒子があることして粒子数密度を加える処理を行った。具体的には壁粒子の粒子数密度に補正値を加えた。また流体粒子の壁面への貫通を防止するために,仮想的な壁粒子の効果を表す補正量を加えた。 開発した方法の検証として、静水圧の圧力分布と水槽の底面中央での圧力の時間履歴を求めた。結果、本手法で求めた圧力分布は滑らかであり、また自由表面付近においても粒子配置がほぼ均一に保たれることが確かめられた。さらに、求めた静水圧は解析解と一致し時間的な変動も小さいことが確かめられた。次に、水柱崩壊問題に適用した際の圧力分布と壁面に生じる圧力の時間履歴を求めた。結果、流体の衝突時には界面が大きく変動するため振動が多少生じるものの、現象分析が可能な程度に圧力振動を低減できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで問題となっていた圧力振動を低減する簡便な方法を開発することに成功し、また壁粒子の数を低減する手法を開発し、水波と構造物の相互作用を計算する際の計算コストを低減することに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に開発した圧力振動の抑制手法および壁粒子の削減手法を、前年度までに開発した重合粒子の手法と組み合わせることにより、海洋構造物に働く流体力を実用的に計算可能にする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に若干の修正をし、一部の研究作業を次年度に行なうこととした。 これにともない研究活動に必要な一部の研究費を次年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
修正した研究計画に従って、適時研究費を支出する予定である。
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