研究課題/領域番号 |
25420864
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
内田 誠 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 教授 (90176694)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 船舶機関士 / 船舶運航管理 / 安全管理技術 / ヒューマンファクター / ERM(船舶機関資源管理) / 舶用機関プラントシミュレーター(MEPS) / ERS(機関室シミュレーター) |
研究概要 |
研究初年度である平成25年度の活動目標は,[1] ERSおよびERMの現況把握,[2] ERMシナリオ開発および[3] ERM教育訓練手法開発であり,研究実績は以下の通りである。 [1] ERSおよびERMの現況把握 : ERS(Engine-room Simulator)の呼称について,神戸大学海事科学研究科ではその態様をより忠実に示すためMEPS(Marine Engine Plant Simulator)と読み替え,学内外のERS関係者への普及に努めている。MEPS勉強会を主宰し,ERSモデルコース(IMO Model Course 2.07)の改編実務を担うトルコ共和国Piri Reis大学から橋本誠悟氏を招き船舶機関資源管理関係者対象の講演会を開催して情報交換するなど,ERSおよびERMの現況把握に努めた。 [2] ERMシナリオ開発 : ERMのための模擬再現環境を拡大するため,MEPS機関動力プラントの一部およびマルファンクションの改変および開発を開始した。これに伴い,イベントログおよびアラームログの自動生成に関するソフト改変を実施し,MEPS機能向上を図りつつある。舶用機関事故に関する船舶機関管理現場(船上)と陸上支援組織との関連に注目したヒューマンファクターの分析を行い,顕在事象(事故等に至った事象)と潜在事象(不安全行動に留まった事象)に関する要因の把握に努めた。これら分析成果を基に,機関士・機関長の経歴の差およびチーム構成や情報環境など”SHELL”環境の違いに応じて不安全な模擬環境を再現するため,MEPSプログラムの開発を行い,被験者対象の検証実験を開始した。 [3] ERM教育訓練手法開発 : ERMシナリオ開発に関する被験者対象の検証実験の実施に並行し,ERMの演習評価手法の検討を進めている。[2]で述べたとおり,MEPSシステムの一部改善を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度である平成25年度の活動目標は,[1] ERSおよびERMの現況把握,[2] ERMシナリオ開発および[3] ERM教育訓練手法開発であり,現在までの達成度は以下の通りである。 [1] ERSおよびERMの現況把握 : 交付申請で掲げた研究実施計画の主要3点は,1-1)ERSの実態把握とERSモデルコースとの対比,1-2)ERM実施環境の整備,1-3)ERM実情把握とERMシナリオ試行であるが,1-1)ERS実態把握は地道な調査が必要なため継続的に実施しており達成度は未だ低いと言わざるを得ない。これに対し,1-2)ERM実施環境整備と1-3)ERMシナリオ試行の進捗は,神戸大学海事科学研究科MEPSを活用して進めており,予定より達成度が高く研究成果を複数公表済みである。 [2] ERMシナリオ開発 : 交付申請で掲げた研究実施計画の主要2点は,2-1)MEPS機能向上によるERM模擬再現環境の拡大,2-2)舶用機関事故分析に基づくMEPSシナリオの開発であり,両者とも極めて順調に進展している。本学設置のMEPSの特徴であるユーザー(教育・研究利用者)によるシステム改変自由度を最大限活かすため,イベントログ,アラームログの自動生成機能を追加しシナリオ開発並びにERMの環境整備を実施した。また,舶用機関事故に関する船舶機関管理現場(船上)と陸上支援組織との関連に注目したヒューマンファクターの分析を行い,顕在事象(事故等に至った事象)と潜在事象(不安全行動に留まった事象)に関する要因の把握に努め成果を公表した。 [3] ERM教育訓練手法開発 : おおむね順調に進展している。ERMはチーム(複数の被験者)により実施しチーム及び構成員(個人)を評価し安全向上を図るものであるが,先ずは,個々人の被験者を対象とした人間反応の把握に取り組み一定の成果が得られ,成果を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度の成果に基づき,“Software - Hardware - Environment - Live ware (SHELL)”環境に対応したMEPSプログラムによる被験者実験を繰り返し実施し,ERMシナリオ開発に大勢の目処を付け,ERM実施による効果検証手法,ERM教育訓練手法の開発および改善について検討を行う。 [1] ERSおよびERMの現況把握 : ERS実態把握を継続して実施する。 [2] ERMシナリオ開発 : 平成26年度中に大勢の目処を付ける予定であり,次の2点を主要な活動とする。2-1)MEPS機関動力プラントの一部およびマルファンクションの改変および開発を継続する。2-2)舶用機関事故に関するヒューマンファクターの分析結果に基づいた不安全な模擬環境再現のため,MEPSプログラムの開発を継続する。 [3] ERM教育訓練手法開発 : 平成26年度はシナリオ開発,演習手法開発,評価手法開発に主力を傾注する予定であり,次の4点を主要な活動とする。3-1)ERMシナリオの開発のため,ERM演習を繰り返しMEPSにおけるプラント操作の手順や正誤など評価の基準となる項目を精査すると共に,MEPSシステム上での自動記録による操作評価システムの開発および導入を検討すると共に,シナリオおよび教育訓練手法の改善を図る。3-2)ERMの演習評価ならびに効果分析のため必要なMEPSシステム改善を開始する。3-3)ERM教育訓練対象者のインストラクターによる評価手法の検討を始める。ERM進行と評価を同時に担うインストラクターのための作業支援管理システムの開発および導入を検討する。3-4) 試行シナリオおよび試行評価手法に基づいたERMの試行に基づき、効果に関する検証手法の検討を始める。
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次年度の研究費の使用計画 |
ERMの模擬再現環境は本研究の根幹要素の一つであり,神戸大学大学院海事科学研究科に設置されたMEPSを活用し,継続的なシステム改善を図っている。一般的なERSと同様にMEPSも複雑な船舶推進動力プラントをコンピューター上で模擬再現するコンピュータプログラムが核となったシステムであるため,活用深度を深めるほど機能向上要請は高くなる。その一方で,複数の機能についてコンピュータプログラムを改変する場合,独立した機能であってもアルゴリズムが類似する場合は,機能改善項目の数に比するほどには所要工数が上がらない場合がある。平成25年度初期申請及び交付申請時の研究計画に沿って,MEPS機能向上を図ったが,所要経費が上記理由により低く抑えられた。次年度に取り組む予定のERMシナリオ開発およびERM教育訓練手法開発の過程において,さらなるMEPS機能向上が必出であるため,235千円余を次年度使用額とする。 MEPSにおけるERM開発環境システムの機能向上を継続的に行う。次年度(H26)に取り組む予定のERMシナリオ開発およびERM教育訓練手法開発では,機関室当直における日常的な機関運転管理状況および作業環境を対象とするだけではなく,複数のマルファンクションが複合的に発生し,熟達機関士であっても希な実経験を基に判断と対応を有する環境の模擬再現を試みる。このとき,MEPS活用の深度化および研究活動の進展に伴い,MEPS機能向上,ERM演習システム強化,ERM評価システム強化など,さらなるシステム改善の必要性が見込まれる。H25年度残余を交付申請時のH26年度予算執行計画に付加することとする。
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