研究課題/領域番号 |
25420865
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大澤 輝夫 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (80324284)
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研究分担者 |
香西 克俊 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 教授 (30186613)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 洋上風力エネルギー / 風力発電 / 風力資源量調査 / 海上風 / メソ気象モデル / ブイ |
研究実績の概要 |
「ブイ観測・数値計算ハイブリッド型洋上風況調査システム」の外洋における推定精度検証のために,北海にあるFINO3気象マストの観測データを用いた検証を行った.海面高10mの風速観測値及びメソ気象モデルWRFの鉛直プロファイルを組み合わせて風車ハブ高度(80m)の風速を推定し,マスト上での観測値を用いてその精度を検証した.その結果,研究対象期間4ヶ月間の1時間毎の推定風速に対して,バイアスは0.12m/s(平均風速比1.3%),RMSE 0.96m/s(同10.1%)という精度を得た.この精度は洋上風力資源量調査としては十分実用レベルにあると言える.またブイ観測値を衛星搭載散乱計ASCAT及びSeaWindsによる観測値に置き換えた場合,上記の精度を若干下回るものの,WRFのみによる計算値よりは高い精度で推定が可能であることも明らかになった. FINO3は陸上地形の影響を受けにくい外洋に位置しており,比較的風況が単純であるため,高い推定精度がえられたものと考えられる.そこで,茨城県波崎海洋観測施設桟橋上でのドップラーライダー観測値を用いて,海岸線近傍海域における同システムの推定精度検証を行った.その結果,海風時には風車ハブ高度の風速を外洋(FINO)とほぼ同精度で推定できることが明らかになった.その一方で,陸風時には大気安定度の非均一性及びその水平移流効果により,鉛直1次元モデル(Monin-Obukhov相似則)を用いた鉛直プロファイル推定は大きな誤差を持つことが判明した.WRFによる3次元シミュレーションによる鉛直プロファイルを用いると精度は大きく改善されたが,それでも海風時に比べると明らかに誤差が大きい.今年度は,大気境界層モデルの変更や4次元データ同化・計算領域の設定方法等の観点から改善を試み,徐々にではあるが精度の改善が見られている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「ブイ観測・数値計算ハイブリッド型洋上風況調査システム」の外洋及び沿岸海域での推定精度が大凡明らかになってきた.外洋及び沿岸海域の海風時においては,鉛直1次元モデル(Monin-Obukhov相似則)でも3次元モデル(WRFシミュレーション)でもハブ高度風速の推定精度にはそれ程大きな差異がないことが分かった一方で,沿岸海域の陸風時には3次元モデルが必須であることが明らかになった.それ故,今後は全ての海域において1次元モデルを使わず,メソ気象モデルWRFだけを使うことに決めた. 大きな問題として認識された陸風時の鉛直プロファイル計算精度の向上こそが今後の本システム開発の鍵と考え,今年度はWRF計算において大気境界層モデルの変更や4次元データ同化・計算領域の設定方法を検討してきた.その結果,鉛直プロファイルの精度の面からはLESよりもRANSの方が良いこと,大気境界層内の4次元データ同化はしない方が良いこと,第1計算領域は広く取る方が精度が向上すること等,徐々にではあるが着実に陸風時の計算精度が向上してきている.また表層風速として人工衛星搭載のマイクロ波散乱計による観測値を使った場合でもWRF単体よりは高い推定精度が得られることも示された. これらの成果を受けて,現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
陸風時の鉛直プロファイル計算精度の向上を今年度の目標とする.本年度までの解析では,陸風時の観測値が2日分しかなく,全てこの期間を対象にした検討であったため,やや一般性に欠ける可能性がある.そこで,波崎海洋観測施設においてより長期間のドップラーライダー観測を実施したいと考えている.予算上の問題は残るが,同期してブイ観測を行うことも検討中である.また神奈川県平塚沿岸域におけるブイ及び観測鉄塔の観測値も入手できていることから,これらのデータも用いて陸風時の推定精度向上を目指したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定した消耗品が想定よりも低価格であったため数千円の差額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度はこの額も含め,消耗品の購入に予算を計上していきたいと考えている.
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