研究課題/領域番号 |
25420871
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安東 潤 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60211710)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 船舶工学 / プロペラ / 省エネルギー |
研究実績の概要 |
平成26年度は、平成25年度に開発した伴流中プロペラ性能計算法を開発済みのプロペラ設計支援ツールに組み込んで、プロペラ前方の旋回流を含む伴流中でのプロペラ翼形状の最適化を行う予定であった。しかしながら、伴流中でのプロペラ性能の計算は、一様流中に比べ非常に長大な計算時間を要するため、何らかの工夫が必要と考えた。 そこで、あらかじめプロペラの設計変数による応答(目的関数)の変化を応答曲面(近似多項式)で表す計算法を開発した。この計算法をプロペラ設計支援ツールに組み込んで一様流中のプロペラ翼形状最適化を行ったところ、応答曲面の生成まで含めても、従来法の約1/10の計算時間で済み、伴流中でのプロペラ翼形状の最適化に有効であることが期待できる。 次に、本研究のサブテーマであるプロペラと舵の相互干渉に関する実績について述べる。主要目がほぼ等しく、ほぼ等しい推力を発生するような2種類のプロペラのそれぞれに同一の舵を組み合わせた際、舵抗力に差が現れる場合がある。これは、プロペラの循環分布が異なるためである。従来の簡易プロペラモデルでは、このような微妙なプロペラ性能の差、そしてそれに起因する舵抗力の差を表すことができなかった。 そこで、簡便なパネル法SQCMによりあらかじめプロペラの幾何形状を厳密に考慮して半径方向の循環分布を求めておき、簡易プロペラの循環分布が、SQCMによって求められた循環分布の形状と一致するように簡易プロペラモデルの中のプロペラの幾何ピッチ分布を調整する新たな計算法を開発した。このようにして、プロペラの性能差を考慮できるようなプロペラと舵の相互干渉計算法の高度化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度はプロペラ前方の旋回流を含む伴流中でのプロペラ翼形状の最適化を行う予定であったが、最適化の計算時間短縮のため、応答曲面法を導入することに注力した。また、得られた改良プロペラについての考察を明快に行えるよう、原型プロペラを再検討した。また、本研究のサブテーマ、すなわち、プロペラと舵の相互干渉についても計算法の高度化という進展が見られた。 これらを踏まえ、最終年度である平成27年度は、プロペラ前方の旋回流を含む船尾伴流中で流体力学的に最適なプロペラを早い時期に得て、水槽実験による検証および考察をスムーズに行える見込みである。また、本研究のサブテーマであるプロペラと舵の相互干渉については目標どおりの達成度である。 以上より、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは早い時期にプロペラ前方の旋回流を含む船尾伴流中で流体力学的に最適なプロペラを得る。そしてそのプロペラの模型を製作し、水槽実験による検証および考察を行う。特に、プロペラの回転方向と逆向きの旋回流がプロペラ性能を向上させるメカニズムの解明を目指したい。 プロペラと舵の相互干渉については、本年度(平成26年度)高度化を行った相互干渉計算法を最適化計算法と組み合わせ、プロペラ-舵系の効率が最大となる舵形状の流力最適化を行う。 なお、当初は原型プロペラとして青雲丸Ⅰ世のハイスキュープロペラを採用するつもりであったが、プロペラの周方向の形状、すなわちスキュー形状の変化が大きいプロペラだと、プロペラ前方の旋回流がプロペラ性能に及ぼす影響を考慮する際、旋回流の影響とスキュー変化の影響が混在してしまうのではないかという疑念が生じた。そこで、スキュー変化が比較的穏やかな新たなプロペラを原型プロペラとして選定し、模型を製作した。
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次年度使用額が生じた理由 |
原型プロペラの再検討の結果、本年度(平成26年度)新たに原型プロペラ模型を製作することに加え、次年度(平成27年度)は改良プロペラ模型の製作が必要となった。これに伴い、導入を予定していたパーソナルコンピュータの台数を減らし、改良プロペラの費用に充てることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の補助金の主な用途は改良プロペラの製作に充てる。残りは、パーソナルコンピュータの導入と実験補助のための人件費に充てる。
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