研究課題/領域番号 |
25420879
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
児玉 淳一 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70241411)
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研究分担者 |
小玉 齊明 函館工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60435386)
中村 大 北見工業大学, 工学部, 准教授 (90301978)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 凍結融解作用 / 一定応力 / ハイブリッド損傷 / 三次元冷却 / 岩石 / 変形 / 異方性 |
研究実績の概要 |
美唄砂岩と支笏溶結凝灰岩を対象に,三次元的に冷却した供試体と一次元的に冷却した供試体を用いて冷却条件が岩石の力学的性質に与える影響について明らかにするとともに,サブゼロ温度領域で一定の大きさの応力を受ける岩石の損傷の特徴について把握した。具体的な内容は以下の通りである。 まず恒温槽を用いて供試体の周囲から三次元的に冷却した供試体と平成25年度に製作した冷却装置により一次元的に冷却した供試体の2種類を用意し,-20℃の下で一軸圧縮試験を実施した。そして,美唄砂岩,支笏溶結凝灰岩の一軸圧縮強度,ヤング率,ポアソン比,限界ひずみには冷却条件の影響が明確には認められないことを明らかにし,凍結した岩石の力学的性質の検討には三次元的に冷却した供試体を用いても差し支えないと結論した。 次に,凍結状態において一定の大きさの応力を受ける岩石の損傷を把握するために,三次元的に冷却した乾燥供試体と含水飽和供試体を用いて,-20℃の下でクリープ試験を実施した。そして,支笏溶結凝灰岩の含水飽和供試体のひずみ速度-クリープひずみ線図は多結晶氷と類似の形状を示すことを見出し,その変形・破壊挙動は、間隙氷の変形の影響を強く受けていることを指摘した。一方,美唄砂岩では,乾燥,含水飽和両供試体の変形挙動に差異が見られたものの,上述した支笏溶結凝灰岩のような特徴が見られないことから,含水飽和供試体中の間隙氷の量が少ないため,間隙氷の変形の影響があまり現れなかったことを指摘した。また,支笏溶結凝灰岩では,応力レベルが小さいと,乾燥供試体に比べ,含水飽和供試体の方がクリープ寿命は短くなる可能性を指摘するとともに,美唄砂岩では,含水飽和供試体の方が常にクリープ寿命は短くなることを明らかにし,これらの結果は,間隙氷のインクルージョン効果と圧力融解により生じた間隙水の応力腐食促進効果により解釈できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初平成27年度に実施予定であった「一定応力のみを与える試験」を平成26年度に実施し,平成26年度に実施予定であった「一定応力と凍結融解作用を同時に与える試験」を平成27年度に実施することにした。これは,前者の試験に比べて後者の試験では,制御が複雑であり,より高度な試験技術が必要となるため,前者の試験で十分にスキルを磨いたのちに,後者の試験を実施する方が妥当であると判断したためである。また,岩石供試体の冷却条件として,三次元的な冷却の他に一次元的な冷却も実施する予定であったが,「平成26年度の概要」で述べたように,凍結した岩石の力学的性質はこれらの冷却条件には依存しないことが明らかになったため,試験の実施が容易な三次元的な冷却条件のみを採用することにした。 以上のように,試験実施の順番や試験条件の一部を変更したものの,平成26年度の試験も円滑に進行したため当初の期待した成果が得られており,全体的には予定通りに研究が進行しているものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
一定応力と凍結融解作用の両方を同時に与える試験を実施し,一定応力あるいは凍結融解作用のみを与えたときの試験結果との比較検討を行い,一定応力と凍結融解作用の相乗効果による損傷(ハイブリッド損傷)の評価・分析を行うことを目的とする。岩石は平成26年度の研究と同じく美唄砂岩と支笏溶結凝灰岩とし,平成26年度の研究成果に基づき三次元的な条件で加熱・冷却を行う。 まず,岩石供試体の温度を+20℃~-20℃の間で繰返し変化させ,供試体の表面温度とともに3方向のひずみを計測し,温度-ひずみ線図の形状の変化を調べるとともに,残留ひずみ,主ひずみと主方向を分析し,凍結融解作用のみによる損傷の発達の特徴を把握する。 次に,一定応力を与えた状態で,岩石供試体の温度を+20℃~-20℃の間で3次元的に繰り返し変化させ,表面温度と3方向のひずみを測定し,上記の凍結融解作用のみを与えた試験と同様な分析を行い,ハイブリッド損傷の発達の特徴を明らかにする。一定応力を負荷したときの効果として,(a)載荷軸方向の変形を拘束することにより凍結融解作用による損傷の異方性を引き起こす効果,(b)偏差応力の負荷により,岩石内のき裂を伸長させる効果の2つが期待される。これらの2つの効果を分離するために,一定応力の大きさを小さくした試験(一軸圧縮強度の10%程度)と大きくした試験(一軸圧縮強度の60-80%程度)の2つを実施する。 最後に,主に損傷の発達速度と異方性に着目して,平成26年度に実施済みの一定応力のみを与えた試験の結果と上記の2つの試験結果を比較検討し,ハイブリッド損傷の特徴と岩種による違いを抽出したうえ,岩石のハイブリッド損傷の発展の定式化を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
試験や計測での失敗が少なく,ひずみゲージなどの消耗品が当初予定より少なく済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に実施予定の試験で使用するひずみゲージの購入に充てる。
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