本研究の目的は、室内実験で扱うことが難しいとされている低周波数領域(通常の実フィールド地震探査で使用される周波数領域)に拡張することにより、これまで応募者が実施してきたメタンハイドレート賦存層(MH層)における減衰現象の周波数依存性(高周波数側:室内実験、低周波数側:実フィールド地震探査)を一元的かつシームレスに分析することを可能とし、減衰現象の周波数依存性を説明するためのマルチスケール岩石物理学モデルを完成させ、弾性波減衰を利用するメタンハイドレート資源探査の指針を理論的に構成することである。今年度は、応力発光体を用いた室内実験法の構築を試みた。応力発光とは、圧縮、引張などの外力により発光する現象であり、歪みゲージや圧電素子による接触型測定とは異なり非接触での測定が可能なため、高い再現性の実現、高精度の測定が期待できる。当該物質を5cm立体のアクリル物体に均一に塗布し、高感度カメラを利用して応力発光の強度と分布を測定する基本システムを構築して測定を開始したが、微弱な発光を取得することが困難であり、微弱な発光を取得できるさらなる高感度カメラが必要であることがわかった。また、マルチスケール岩石物理学モデルについては、様々なモデルの中からGuerin and Goldberg(2005)モデルとBest et al.(2013)モデルの特徴を比較し、両者の適用価値を見いだした。さらに、未固結媒体ならびに固結媒体を塩水飽和させた物質を部分凍結させたものを模擬メタンハイドレート試料としてみたてた試料について、P波とS波での減衰メカニズムの相違を議論した結果、Squirt Flowに起因したP波減衰がpermeableな地層特性を表現していることから、メタンハイドレート層における減圧法の最適箇所の選定にはP波減衰が有効であるという探査指針を理論的に構成した。
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