研究課題/領域番号 |
25420884
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
田角 栄二 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 技術研究副主任 (50553228)
|
研究分担者 |
井町 寛之 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 主任研究員 (20361933)
今野 祐多 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 技術研究副主任 (80631762)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | メタン / 炭素同位体比 / 水素同位体比 / 高圧培養 |
研究概要 |
メタンの炭素および水素同位体比は、自然界におけるメタンの生成起源を推定する指標として利用されてきた。メタン生成菌が生成するメタンの炭素同位体比に関しても良く研究されており、一般的にその分別効果はマグマや地殻内に存在する有機物の熱分解によるメタン生成よりも大きいとされてきた。しかしながら、その根拠となるデータは、すべて大気圧下における培養において得られたものである。連携研究者である高井は、好熱性メタン生成菌(Methanopyrus kandleri)による高圧条件におけるメタン生成では、その炭素同位体分別効果が-12‰以下であることを示した。本研究では、この現象が深海(低温高圧環境)由来メタン生成菌において普遍的なものかどうかを評価するため、深海底堆積物から分離した低温性メタン生成菌を高圧条件で培養して生成するメタンの炭素および水素同位体を網羅的に解析する。2013年度は、供試菌株のうち数株を高圧条件で培養し、増殖速度、メタン生成活性および炭素同位体のデータを取得した。増殖速度およびメタン生成活性は、加圧(15~35MPa)により増加した。また、メタンの炭素同位体比にも圧力の影響がみられたが、増殖速度およびメタン生成活性との関連性は認められなかった。さらに、これらの成果に加え、深海底堆積物より新たにメタン生成菌の分離に向けた集積培養に成功した。このメタン生成菌はメチルアミンからメタンを生成することから、本研究課題の目的であるメチル化合物から生成するメタンの同位体分別の評価にあたり非常に有用であると考えられるので、早急に純粋分離を試みる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
供試菌株が一般的な微生物実験法が適用できない性質を有していたために、一部の実験において実験手法の検討が必要になるなど想定外な事象もあったが、研究は概ね順調に進展している。昨年度の実験における懸案事項も現在はほぼ解決しており、当面は支障なく実験を進められると考えている。さらに、本研究課題以外の研究からも本研究に応用できる事象が見つかるなど、当初の想定以上に今後の研究が発展することも期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
既にサンプルガスを採取しているものについてはメタンの水素同位体比測定を行う。供試菌株のうち培養が完了していないものについては逐次培養を行い、比較解析に必要なデータを取得する。また、初年度は至適生育温度でのみ培養を行ったが、平成26年度は当初の計画通り2-4℃の低温条件でも高圧培養を実施する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
一部の実験項目において一般的な微生物実験法が適用できないことが判明した。研究遂行にあたり必要不可欠な部分であった為、急遽検討に取りかかった。懸案事項は解決したが予定していたガス試料の分析が完了せず、分析に要する経費が余剰となった。 平成25年度の実験で採取し、分析が完了していないガス試料を同位体質量分析ガスクロマトグラフで分析する。予算は分析に必要となる標準ガスおよびガスクロマトグラフの移動相として使用するヘリウムガスの購入に充てる。
|