研究課題
磁場閉じ込め核融合プラズマの境界領域(周辺・ダイバータ)プラズマにおける熱・粒子輸送を制御するためには、イオンの挙動、特にイオン温度を正確に把握することが重要である。本研究では、イオン温度の精密測定の実現を目的として、高いイオン温度を有する筑波大学のタンデムミラー型プラズマ装置GAMMA10/PDXの開放端磁場領域に設置されたダイバータ模擬実験モジュール (D-module) において、プローブを用いたイオン温度計測を行い、粒子輸送に大きな影響を与える磁場に対するイオン温度異方性の評価を行った。D-module内に磁場中のイオン温度測定に用いられるイオンセンシティブプローブ (ISP) を設置するとともに、GAMMA10プラズマのイオン温度が高いことを利用して、その上流側、下流側でISPと同じ磁力線上に設置された静電プローブのイオン飽和電流の解析によるイオン温度の評価を行った。また、イオン速度分布関数を測定可能なレーザー誘起蛍光 (LIF) 法のGAMMA10への適用の準備も進めた。ISPおよび静電プローブ計測の結果、得られたイオン温度には、各々のプローブで明確な差異が観測された。GAMMA10端部プラズマはその開放端磁場配位により、磁力線に平行および垂直方向のイオン温度が大きく異なることが知られている。そこで、プローブ計測位置の磁場配位において、磁気モーメント保存、エネルギー保存則を考慮したイオン温度の異方性の解析を行い、実験結果と詳細に比較したところ、ISPでは磁力線に垂直方向のイオン温度、静電プローブのイオン電流から評価したイオン温度は磁力線に平行方向成分を示していると考えるのが妥当であることが明らかとなった。これらの知見は境界領域プラズマの粒子輸送の理解に資するとともにイオン温度計測の精密化に寄与する重要な成果と言える。
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